時事放談 トップページ 毎週日曜あさ6:00〜6:45
過去の放送 出演者 時事放談「サロン」 テレビプロデューサーの日々
 
 
 第三十一回 ('04年12月5日放送)
  「イラク自衛隊派遣延長〜ねじれる世界の中で〜」

  ゲスト: 後藤田正晴 氏 / 加藤周一 氏

司会は岩見隆夫さんがお休みのため、筑紫哲也さん。テレビだけではなく、新聞・雑誌を含めても初めての顔合わせ。

イラクの自衛隊派遣期限は12月14日。来週には閣議決定が予定されています。自衛隊派遣の際の様々な論議が、派遣の既成事実で「仕方がない」との雰囲気に支配されてきた現在。日本の安全保障の表も裏も知り尽くした「カミソリ」こと後藤田氏、そして鋭い感性と該博な知識で他の追随を許さない「知の巨人」こと加藤周一氏、そして筑紫哲也が語った。


― 加藤氏について
後藤田 「ジャンルが違うしね、知識の幅と深さがもう全く違うんですよ。太刀打ちできないからこっちが辟易してるんです。朝日新聞の(夕陽妄語)毎回読ませていただいてるんですけど、僕は正直言ってね、半分、わかんないな」

― 自衛隊派遣延長について
後藤田 「この戦そのものがね、間違った戦だったと思いますね。いち早く支持して自衛隊派遣という決定をなさいましたけどね、これをまた私は間違った判断だったなあと、こう思いますね」

加藤

「一つは、自衛隊イラク派遣があって、まずそれが決まって、さて派遣したらじゃあ何をしようかということは、後で考えたって感じなんですよ…。第二の点は、小泉さんは、まだどういう戦争なのかわからないうちに支持するって言ってしまった。だから戦争を支持するんだったらね、何かしなきゃならない、だから自衛隊派遣となるわけ。

ところがその戦争の支持自体が私はおかしいと思うわけ。テロリズムとの戦いっていうけど、テロリズムとの関係ははっきりしない。今までのところね。それから大量破壊兵器、WMDというの、これが見つからない、それがなくなった」


筑紫 「今の特措法というのを見ますとね、政府に、自衛隊の安全確保義務をいうっていうのがあるんですね。ただ、この決め方は非常に他律的だと思うんですが、つまり犠牲が出るまで待って自分が決めるってことでしょう。自分としてこの辺までつきあうんだと主体的な意志決定ではなくて…、何か犠牲を待ってるようなものの動き方ってのは、これは非常にやりきれないと思いますけどね」

加藤

「日本中心主義すぎると思うんだな。飛行機で事故起こすと、日本の新聞一番先に、めでたいことに、日本の乗客はなかったと書くでしょう?そうすると他の国の人はいくら死んでもいいけど、とにかく日本人が入ってなければ飛行機事故も、まあめでたいとまでは言わないけど、言わんばかりに書きますね。そういう、この日本中心主義だと思うんですよね。

で、まあイラクの問題もそうだと思いますけど、あの、平和の問題ってのは関連してるからね、だから日本の平和と安全ということもアジアの平和に関係してたり、それからイラクの状況、中東の発展の仕方によるでしょう。だから、あの、必ずしも日本に損害があるかないかってことに固守しないで、その、中東情勢がね、どこにむかってどこに発展しつつあるのかっていうことを考えて、だからこうしましょうっていうことになった方がいいと思うんですよね。だからその前提なしに日本人が出てるから犠牲が出たら退こうとかちょっと日本中心すぎるんじゃないかな」


後藤田 「日本の言葉にね、誤りを正すのに何はばかることなしという言葉がありますよね。それから見ればそれはやはり、派兵それ自身がね、僕は誤った判断だったんだから、この際は12月でね、撤兵した方がいいだろうと、こういう意見がね、それは出てくるのが私は当然だと思います。

だけれどもね、現時点でね、それじゃあできるのかっていうことになるとね、日本の置かれた国際的な立場、そういうことを考えると、それはやはり政権担当者としては選択をするのは非常に僕は難しいと思う。だからどうするかっていうとね、来年の1月にね、いずれにせよね、移行政府ができるんですよね。そして3月に、実際の警備を頼んでおったオランダ軍が撤収するんですよ。ならばこの時期、オランダ軍の撤収と同じ時期にですね、やはり自衛隊の派遣というものは、私は撤収した方がいいんでないかなと、私はこういうふうに今思ってるんですよね…」


一言