『居酒屋もへじ』

水谷豊&石井ふく子 第6弾!

インタビュー

水谷豊さん、石井ふく子プロデューサー 対談

(写真)

― 今回で5作目となる『居酒屋もへじ』のコンセプトをお聞かせください。

石井ふく子:昨今、様々なドラマがありますが、この『居酒屋もへじ』と類似したドラマはないかもしれませんね。『居酒屋もへじ』という作品は、「水谷さんの違った一面を出したい」と考えた作品でして、“とても温かいところへ、人が集まってくる”というのが大きなテーマです。居酒屋「もへじ」に集まる人々の優しいドラマにしたいなと思い、水谷さんへ強引にお願いしました。たぶん、1回だけのドラマだと思われたでしょうが、そうはいかないと(笑)。ただ、皆さんお忙しい方ばかりなので、年に一度だけでも水谷さんの「もへじ」を観ていただきたいという思いで、今回で5作目となりました。

私は下町の上野の生まれということもあり、このドラマは上野がモデルとなっています。当初、どのような設定にしようかと考える中、主演の水谷さんには、今までとは全く違う水谷さんを観ていただこうかと思い、さらにそこを水谷さんに膨らませていただきました。共演される方たちも非常に個性の強い方ばかりですが、皆さんノッて演じてくださっていて、とても嬉しく思っています。そこに、毎回ゲストとなる女優をお招きして、温かな物語を描いています。
水谷さんをはじめレギュラー出演者の誰一人、欠くことのできないドラマなので、皆さんのスケジュールが何とかなれば、年に一度、続けていきたいと考えています。

― 今回の物語のテーマをお聞かせください。

石井ふく子:今回は“母と子”が大きなテーマとなっています。サトウハチロー先生の「母という字を書いてごらんなさい」という詩があり、劇中にも語られるのですが、そこには「母という字を書いてごらんなさい やさしいように見えて むづかしい字です」とあります。この詩になぞらえるように、一路真輝さん演じる学校の先生をしながら一人娘と暮らす親子の関係を中心に、水谷さん演じる平次や井上順さん演じるジミー坂田それぞれの“親子”のことなども描いています。

(写真)

― 台本を読んだ感想をお聞かせください。

水谷豊:これで5作目となる今回は“母と子”がテーマということで、ドラマの中ではいろんな“母と子”が描かれます。やはり、自分の母親のことを思い出しますね。こういったテーマがあると、普段はないがしろにしている母を、ふと思い出すわけですけど、ときにはこうやって母のことを思いっきり考えてみるということは、やっぱりいいですね。
それと、1作目から4作目までは、平次はゲスト出演されるヒロインを毎回好きになってきたのですが、今回は少し違う展開になっています。今までの展開のクセが付いてしまっているためか、撮影中、今回もヒロインの女性を好きになりそうになってしまい、「あ、いけないいけない…」という感じでした(笑)。
4作目まで観てくれた友人の評判も良く、徐々にこのドラマの良さが知れ渡ってきている印象はあります。1年に1本のペースですからね、ゆっくりではありますが、『居酒屋もへじ』の世界観が、少しずつ浸透してきた感じがします。

― 水谷さんが思うこのドラマの良さは?

水谷豊:まずは、平次をはじめとした登場人物が、人を裏切らないということでしょうか。そして、とても正直なところも魅力だと思います。それでいて、ユーモアも兼ね備えていて、会話もおもしろい。そんな人たちと知り合うことができて、傍にいてくれたら、人生や日々の生活が楽しくなると思います。
撮影現場の雰囲気も、シリーズを重ねるごとにアットホームさが増してきています。スタジオ撮影の合間には、スタジオの前室に皆さんが集まって、いろんな話をするんです。いろんな話をしながら、皆さんそこでリラックスできるんですよね。出演者だけではなく、撮影スタッフの方ともいろいろと話をしています。

石井ふく子:でも、いつの間にかセリフ合わせになっているんですよね。

水谷豊:そうなんですよ。自然と誰かが始めるんですね。でも、長いシーンなのに途中から始まってしまうこともあって、言い出す方の自分のセリフから始めてしまうんですね。「そこから始めるなら、最初からやりませんか?」と言いたいのだけど、もう始まってしまったし(笑)。そんなところも楽しいですね。

(写真)

― 今回で5作目となりますが、何か変わってきたことはありますか?

石井ふく子:オリジナル作品として一から始まったので、最初は手探りの部分もありましたが、回を重ねていくごとに新しく肉付けがされていきますし、水谷さんご自身も楽しんで演じてらっしゃるので、当初よりは色々と膨らんでいると思います。

水谷豊:はい、楽しいです。

石井ふく子:皆さんが楽しんで演じてくださる、それも一生懸命に楽しんでいらっしゃる。今はちょっと難しい時代なのですが、そんな方たちが集まることで“ドラマのTBS”と言われたあの頃の、TBSでないとできないドラマになっているような、そんな気がしています。

― 劇中に出てくるサトウハチロー氏の詩に関して想うこと

水谷豊:「母」という字を意識して書いたことがなかったというか、初めて知ったのですが、この詩の通り「母」という字って、難しいですし、書くたびに違うんですね。

石井ふく子:みなさん違いますね。

水谷豊:そもそも、皆さんどんな字を書いても日々違いますが、「母」という字はたしかに格好つかないですね。

石井ふく子:これでいいという「母」もないんですよね。

水谷豊:そうですね。

石井ふく子:私が書くと細くなるのですが、それは母が痩せている人だったから(笑)。その昔、佐藤先生が『ありがとう』というドラマをやられていたときに、毎回詩をくださったのですが、その中にこの詩があったんです。その当時の詩が今、本にまとまっているので、このドラマを作るに当たり、この詩を念頭において作家に脚本をお願いしました。

水谷豊:やはり、母は偉大なんでしょうね。

― お母様はどのような方ですか?

水谷豊:僕は母の大好きな部分と大嫌いな部分がありましたが、他界してからは母の全てが好きになりました。なぜそんな気持ちになったのか?なぜ亡くなる前に全部好きにならなかったのだろうと、とても不思議な感じです。

石井ふく子:うちの母は、非常に清くてとてもユニークな人で、子供の私に対して「難産で大変だったし死ぬかもしれないと思ったけど、お前を産んでやった。(お前の人生を)先払いしたようなものだから、これからはお前一人で自立しろ」と言っていました。
そんな母は、自分の娘よりも、周りの人への面倒見が非常に良かったです。でも、そんな母のおかげで、今もこれだけのお仕事ができていると思いますし、ひとえに恵まれていると感じています。

― 今回、ヒロインを務める一路真輝さんの印象をお聞かせください

水谷豊:一路さんは初めてご一緒させていただきましたが、とても、芝居が正直な方ですね。良い意味で作り込んでいないというか、お芝居を重ねるごとに、向き合ったときの反応がいろいろと変わっていくんです。その時の空気をとても大事にする方だと思います。

― 印象に残っているシーンなどはありますか?

水谷豊:居酒屋「もへじ」の店内で、一路さんが演じる川上遥さんの「先生になって、お酒を飲むのを控えている」というシーンがありまして。平次の勧めで久しぶりに飲むというお芝居で、一路さんがとても良い表情をされたのが印象に残っています。あの綺麗なお顔がくしゃっと崩れるの、それがとても良かったです。見どころです(笑)。 そのほか、毎回そうなのですが、居酒屋でのいろんなシーンは見どころですね。常連客とのシーンも、段々と阿吽の呼吸ができていますし、今までの積み重ねてきたことによって、皆さんお互いの世界ができてきたという感じでしょうか。セリフの掛け合いなど、とても楽しいです。

― 視聴者の皆さんへメッセージをお願いします。

水谷豊:この『居酒屋もへじ』というドラマは、今までは恋の話が中心でしたが、今回は「平次が人のために何かをしてあげる」そんなもへじを作りたいと考えました。そこで、今回のテーマは“母と子”にしました。一路さん演じる遥の“母と娘”やジミーの“母と息子”を描くほか、そして平次も母のことを語ります。今までとは違う平次の良さ、温かさを観ていただけると思います。

石井ふく子:本当に「居酒屋もへじ」のようなお店があったら素敵ですよね。このドラマは、コミカルに描かれている部分のほか、人の関わりなどリアルさも多分にある。これが『居酒屋もへじ』の世界観だと思います。ちょっと方向が変われば、シリアスでとても辛く暗い物語になってしまうところを、“もへじ風”という感じでコミカルにまとめているので、どなたにも楽しくご覧いただけると思います。

ページトップへ