球児達が汗を流し、毎日を過ごすグラウンド。
７０年前、その場所は、沖縄戦の激戦地だった。

「甲子園で校歌を歌おう」

球児達が決まって話す、この言葉のうらには、 平和への思いが込められた校歌を、 戦後７０年という節目の年に歌いたいという、強い気持ちがあった。

沖縄県立糸満高校。
太平洋戦争末期の沖縄戦で、 住民の半数近くが犠牲になった激戦地、糸満の地に、 戦後復興の足掛かりとして誕生した学校である。

戦争の爪痕が深く残り、授業もままならなかった開校当時。
それでも、新たな時代の幕開けに、当時の若者は活気づいていた。

糸満高校の校歌には、その当時の人々の思いが綴られている。 戦後、復興へと向かう希望に満ちた歌詞と、 明るいマーチング調のメロディ。

７０年もの間、生徒達の青春を彩り、 歌い継がれてきた重みのある校歌である。

平和な今、大好きな野球が出来る喜びを感じて―。
梅雨の明けた沖縄の空に、糸満高校の校歌は高らかに響く。