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吉岡さんは1944年からの大陸打通作戦に参加した。大陸打通作戦は、中国大陸を縦断し沿線の敵軍や航空基地の殲滅を狙った作戦で、兵力51万人を投入、進攻距離は3400キロに及んだ。吉岡さんは最下級の兵士の立場から戦争の記憶を言葉にし、絵にした。 作戦では、補給がなく現地調達を求められた。中国の民間人から食べ物を奪い、家を焼き払いながら行軍。食糧を奪われた中国人は、大人も子供も、女性も男性も折り重なって死んでいったという。荷物の運搬をさせていた中国人の農夫が逃げ出したので、上官がその場で銃剣で刺して殺したこともあった。軍人勅諭では「上官の命令は朕の命令」とたたきこまれた。死ぬか生きるかの状況でも、上等兵からの執拗ないじめは日常茶飯事だった。忠君愛国を胸に戦場に赴いた若い兵士は、「皇軍」に失望し、死んでしまいたいと自暴自棄になった。 ![]() 会での協議の結果、本のタイトルは「ゼロの進軍」と決まった。内地からの補給も、作戦の見通しも、兵士の命の価値もゼロだったことから名づけられたものだ。 ![]()
取材:井上佳子(RKK熊本放送)
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