沖縄戦末期、地下壕から打たれた一通の電文が、69年後の今も語り継がれている。

「沖縄県民斯ク戦エリ　後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」

電文につづられたのは、戦場の沖縄県民の苦難だった。軍人の立場で、住民について触れることの異例さから、海軍司令官・大田實は、異色の指揮官とみられているが、その信念はいたるところに表れていた。

大田は、昨年JNN系列で放送した報道ドラマ「生きろ〜戦場に残した伝言」で描いた、戦中最後の沖縄県知事・島田叡と心を通わせる仲だった。二人は、ある価値観を共有していた。そして、その二人の思いが、あの電文に結びついていた。

軍民混在の戦場で、軍人の数を上回る住民の犠牲を生んだ沖縄戦。陸軍の決断が更なる悲劇につながったが、一方大田が率いた海軍の戦いからも沖縄戦の姿がみえてくる。大田が残した数々の電文、遺族や元兵士の証言から、その実相と大田の残した伝言の意味を探る。