戦争末期に撮影された1枚の写真がある。撮影日は昭和20年6月15日。場所は福岡市に置かれていた特攻隊員の収容施設。特攻命令を受けて出撃し、機体故障などの理由で生還した特攻隊員を隔離する日本で唯一の施設である。 アジア太平洋戦争の末期、国の盾として死を強要された若者たちが特攻作戦に参加、敗戦までのわずか5ケ月ほどで数千人が南の海に散華した。当時、降伏直前まで戦争に負けていることは国家機密とされ、若者は必勝を信じて死んでいった。 田川市在住の記録作家・林えいだいさん(80)は、生還した元特攻隊員のもとを訪ね、戦史に残らない記憶を集め続ける。「特攻隊を美化する雰囲気が出ている。そうじゃない。この世の中に生きてきた以上は命というのは1回しかない」 林さんは悪性の癌に侵され、抗がん剤による治療を続ける。自らの死を意識したとき、あらためて「特攻の愚かさ」というテーマにたどり着いた。人生の集大成として特攻作戦の真実を伝えようとしている。
制作:RKB毎日放送
取材:西嶋 真司 |
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