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京都府南丹市園部町。静かな山間の中にある京都伝統工芸大学は1995年に設立された新しい大学だ。陶芸、漆、木彫、金工、竹工芸、和紙工芸など9つの学科で、伝統工芸を教えるユニークな構成で、教えるのはすべて職人である。いわば工房が学校の中にある。 ![]() 仏像彫刻科の教授、須藤光昭さんは群馬県生まれで秋田県育ち。最初に弟子入りした東京・浅草の職人のもとから、京都へやってきて45年になった。その須藤さんの指導の下で学生たちが彫り上げたのが、清水の大日如来像だった。 ![]() 京都市山科にある須藤さんの工房には、6人の弟子がいる。すべて女性で、4人は伝統工芸大の卒業生だ。 一方、大学には、1学年15人の学生がいる。高校出たての学生ばかりではない。一般大学からの転入、定年退職後の入学など様々だ。須藤さんは工房と大学を往き来する日常である。 職人から職人へ、しかも教えられるのではなく「親方から盗め」と言われて育ってきた、この国の伝統工芸。いま、どの分野も需要と市場の縮小に加えて、後継者不足が深刻だ。 「学生が育つことは自分の商売敵が増えること」と言いつつ須藤さんは、「いまは工だけでなく商のセンスも求められる。秘伝の技を一人で持っているより、"業界"を維持し大きくしないとどうにもならない」と語る。 ![]() 工房は、ノミと槌の音ばかりで、静寂の世界に近い。一方、大学では、須藤さんの大声が飛び続ける。一瞬の気のゆるみはただちに怪我につながる。 初めて彫刻刀をもつ1年生は、学年が上がるごとに、見違えるような上達ぶりに見えるのだが、何人がプロの職人に育つのだろうか。技能は習得しても、仕事の場が得られるのだろうか。 仏像彫刻師・須藤光昭さんの日々を通して、伝統工芸の現状の一端を垣間見ていく。 。 ![]()
制作:TBSテレビ
企画・取材:岩城浩幸(TBS報道局) 取材・構成:清重宗久(TBSプロネックス) |
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