2011年3月。東日本大震災とそれに続いた原発事故。おそらく東京にいたほとんどの誰もがたじろぎ、戸惑った。その不安は突如、まるでゾンビのようにぞろぞろと大量に現れた群衆と、（被災地でもないのに）店からは水や食料が大量になくなるという形で表れ、“脆弱な都市”として私の記憶の中に残された。

あの日からおよそ2年半の時間が経った現在。我が国の首相は宣言する。

「東京は、安全です」

一瞬、駄洒落にも聞こえたこの発言は、地方にリスクを追いやり、恩恵だけは東京がしっかり授かるという差別的な日本社会の構造と“現実”を、ある意味で堂々と認めてしまったことになる。

それでも「東京だから仕方がない」「東京だから当たり前」「東京だから許される」「東京だから…」という声が未だに絶えないのは、“東京”という都市を私たちが昔も現在も幻想＝夢として、逆説的にポジティブに捉えているからではないか。

その幻想の正体が何なのか。否が応でもなく“個”が“集”に溶け込むこの都市で、東京を日常の場として選択している“あなた（私）”に、問う。

「なぜ今、東京なのか」