本土復帰40年をむかえた沖縄に祝賀ムードはない。今もなお解放されない米軍基地の重圧に、島を抗議の声が包む。「差別」は一向に解消されていない。その沖縄に、心の奥底にある理不尽さへの怒りを、「笑い」の舞台に変える集団がいる。舞台の名は「お笑い米軍基地」。 苦しみをあえて「笑い」のネタにするのは、脚本・演出を手がける、地元沖縄のお笑い芸人・小波津正光さん。常識を破ったきっかけは、8年前の夏に起きた米海兵隊ヘリの墜落事故だった。本土と沖縄での報道の扱いの大きな違い、基地問題など他人事の東京の若者たち―さまざまな意識のギャップへの疑問は、いつしか「伝える」エネルギーになっていた。舞台に展開されるのは、徹底した“権力”側の風刺とウチナンチュの本音だ。 観客が目の当たりにする、自分たちの日常や、矛盾への疑問に、いつしか“共感の笑い”が広がり、舞台は大きく成長してきた。そこには、苦難を乗り越えようとする民衆を後押しし、その代弁者でもあった、かつての沖縄の芸人に通じる姿があった。それは、過去も現在も、常に「沖縄の今」がネタになる悲しい現実でもある。 恒例の新作公演に向けた稽古が始まった。今年も小波津さんは、変わらず鈍感な国に突っ込み続ける。笑いの中にこそ、本質が、真理がみえてくる。
制作:TBSテレビ
取材・構成:佐古忠彦 |
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