![]() ![]() 「真綿で首を絞めるようだ」。全身の筋肉が徐々に萎縮していく難病「筋ジストロフィー」は、いまだ根本的な治療法がないため、専門医からもそのように例えられてきた。 ![]() 筋ジスを抱える大阪在住の書道家・石井誠さん(29)は今年の夏、初めて東京で個展を開いた。個展のテーマは「生」。体重わずか25キロの石井さんが書いたとは思えない高さ1.7メートル、幅8メートルという巨大な作品も展示された。 石井さんの活動を支えるのは、「NPPV」と呼ばれる鼻マスクなどを使った人工呼吸の方法だ。筋ジスは、症状が進行すると呼吸ができなくなるため、多くの患者が「気管切開」によって"寝たきり"を余儀なくされてきた。 ![]() 北海道にある八雲病院の石川悠加医師は、こうした状況を打破するため、NPPVを日本に広めようと長年にわたり奮闘している。「治らない病気を治そうとする治療ではなく、1人の人間として身体に向き合い、どのようにより良い生活を送っていけるか」。石川先生は、八雲病院の取り組みが、そのきっかけになればと話す。八雲病院ではこの20年間、一度も気管切開を行っていない。 ![]() NPPVは近年、患者のQOL・生活の質や教養を保つ医療方法として、海外を中心にガイドラインで推奨されてきたが、難病ゆえの医師や患者家族の知識不足や、これまでの慣習のため、日本国内では普及に至っているとは言い難い。医療方法を選択できず“切り捨てられる”患者たちがいる。 難病を持つジレンマや苦悩を書道で昇華させる若者と、患者の人生を輝かせようと医療の可能性を追求する女性医師。2人の「生」への思いを追った。 ![]()
取材・構成:石川瑞紀
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