![]() ![]() 冬、雑木林に落ち葉掃きの乾いた音が響く・・・。埼玉県所沢市や三芳町など4市町にまたがる「三富(さんとめ)新田」。三富の一年は、この落ち葉掃きから始まる。 ![]() 自然の姿がそのまま残っているように見える雑木林。実は約300年前に人の手で作られた「人工の林」である。もともと農作物の生育に適さない痩せた土地だった三富周辺に、元禄7年、多くの開拓入植者がやってきた。彼らが最初に行ったのは、落葉樹の雑木林を作ること。落ち葉の有機質で堆肥を作り、農作物に適した肥沃な土を得るためである。 ![]() 300年前の開拓入植者たちの末裔が、今も先祖代々受け継いできた雑木林と落ち葉農法を守り続けている。彼らの堆肥作りへのこだわりや雑木林への思いを追った10ヵ月。そこから見えてきたものは、多くの生き物が共存共栄している「自然と調和した農法」だった。 平成11年、そんな三富を揺るがす事件が起きる。いわゆる「所沢ダイオキシン騒動」である。産廃施設が排出した高濃度のダイオキシンが問題となった。なぜ産廃施設が三富周辺に集まってきたのか?それは意外にも、三富の象徴とも言える雑木林と深く関係していた。12年経った今、産廃施設はどうなっているのか。問題は残っていないのか。 ![]() 今年春、あるプロジェクトが発足した。このプロジェクトの最大の目標は、「海外版三富」を作ること。具体的な展開方法は模索中だが、三富農法が21世紀の農業モデルのひとつになり得るとメンバーたちは考えている。物質文明の限界を感じる今の時代、自然と共存共栄する三富のシステムは、私たちに何を教えているのだろうか。
取材:今井健志・若林麗民
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