![]() ![]() 65年前、アメリカ軍が上陸した読谷村の浜からすぐのところに、そのアトリエはある。彫刻家・金城実さん。サトウキビの葉が揺れる、まぶしいばかりの風景の中で、金城氏は沖縄の思いを彫り続けている。集団強制死の悲劇が起きたチビチリガマにある平和の像もそのひとつだ。 私(佐古)と金城実氏の出会いは、ある少年の事故死をめぐる取材がきっかけだった。少年は、金城氏が本土で英語教師として教壇に立っていた当時の同僚の息子で、彼に弟子入りを熱望していた矢先、米兵との交通事故でこの世を去った。少年の父親は、理不尽な日米地位協定の不平等さに、被害者の会を立ち上げ、今も活動を続けている。 ![]() 少年の死をきっかけに、金城氏は変わらぬ沖縄の現状を訴えようと、10年かけて、沖縄の歴史を刻んだ100メートルに及ぶレリーフ「戦争と人間」の創作に取組んだ。そこには、アメリカやこの国に翻弄された沖縄の歴史と民衆の姿が刻まれている。 ![]() 今年春、金城氏の姿は総理官邸の前にあった。普天間基地の県内移設に反対するための抗議で、憲法9条の条文がプリントされたTシャツに身を包んだ金城氏の口から出ていたのは、沖縄の叫びだった。しかし、「最低でも県外移設」への期待は裏切られた。 なぜ、沖縄なのかの根源的な問いに誰も答えない中で、金城氏は、変わらず問い続け、そして沖縄はどうするのか? 沖縄自身にも問いかける。 翻弄される沖縄のいまを、金城氏の姿を通して描く。 ![]()
取材・構成:佐古忠彦(TBS報道局)
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