新型インフルエンザ騒動から1年。新型インフルエンザによる死亡率で、日本は0.15%と先進国の中でも最も低く、世界の注目を集めている。 その一方で、患者の出た学校に対して、「地域から出て行け」、「責任を取れ」といった誹謗中傷が殺到し、生徒に対するタクシーの乗車拒否、制服のクリーニング拒否などといった事態が生まれた。 なぜ、こうした事態が生まれたのか。行政の出す情報の内容、情報の出し方、マスメディアの報道のありように問題はなかったのか。そして当時盛んに呼びかけられた言葉、「正確な情報に基づいた冷静な対応」。その意味するものは何だったのか。そもそも、「正確な情報」という言葉の意味するところは、何だったのか。 そんな疑問から追っていったもののなかに、「強毒型」という言葉がある。1年前、すでに「新型」=「強毒型」という図式が、広く国民の間に浸透していたという素地があった。そこへ発生した新型インフルエンザ。国の実際の対応は、検疫や発熱外来などに象徴されるように、この「強毒型」に、引きずられた。 だが、「強毒型」とはそもそも何を意味するのか。専門用語なのか? 行政用語なのか? その定義は・・・?「強毒型」という言葉を使う行政や、研究者、メディアを取材していくうちに、意外な事実が浮かんできた。 危機に際して、曖昧な情報、不明確な言葉は、人々の不安や恐怖心を増幅させる。誹謗中傷は不安の裏返しであり、流布される言葉や情報が、まさに誹謗中傷と結びつく結果となった。 この一年の経験から、私たちは何を学ぶべきなのか。そして、次のインフルエンザ流行にどう向き合うべきなのだろうか。
制作:TBSテレビ
取材・構成:斎藤雅俊、小嶋修一 |
■ バックナンバー
|