中国の伝統芸能・京劇。
200年の歴史を持ち、「中国文化の集大成」とも言われる。様式化された動きと華麗な立ち回りは、しばしば日本の歌舞伎に例えられ、中国では国民的演劇として認知されている。
その京劇界にあって、18年前、日本に渡った京劇俳優がいた。張紹成さん(46)。彼は本国ではかつて国家直属の劇団・中国国家京劇院で主役を務めたこともあるエリート俳優だった。しかし彼はその地位を投げ打って来日した。
1980年代、中国から海外に渡った京劇俳優は多い。改革開放路線の時代になって、京劇人気が底を打ったことが大きな原因だが、それと同時に張さんは「国が管理する京劇自体のあり方」に危機感を感じている。「客がいなくても給料はもらえる」という環境、そしてその中で「俳優とともに海外へ流出して散逸してしまう秘伝の技の数々」・・・。
京劇の伝統を守る上で、現状は非常に厳しい。そうした中、異国、異文化の地・日本に渡って京劇を演じ、そしてその伝統を守っていく道を選んだのはどのような思いからだったのだろうか。
リポーター&取材:柴山延子(TBSニュースバード)
取材&構成:松本知宏/吉田謙治
撮影:藤本孝志/多田誠(北京支局)/劉樹杰(北京支局)