![]() ![]() 「目が見えなくても映画が観たい」、「音が聞こえなくても映画を楽しみたい」・・・。目や耳の不自由な人はおよそ70万人といわれるが、サポートする家族、団体、友人の数は、その何十倍にもなる。そして、そうした家族や友人と一緒に、映画やビデオを観たいという彼らの願いは、強いものがある。 ![]() 字幕の入った映画に接したことのある人は少なくない。洋画の字幕版。多くのテレビ番組も、字幕の入っていないものはない。だが、耳の不自由な人にとって必要な字幕は様子が違う。セリフや人名、地名は言うまでもない。落下音や破裂音、さらには風の音や鳥の声、あらゆる音が対象となるが、頼りになるのは全て文字である。 眼の不自由な人には、音だけが頼りになる。セリフの間に、人物の表情や動作、風景などの情報を全て音声で説明することが求められる。 限られた秒数の間に、必要かつ十分な情報を盛り込む。しかも、見たとき、聞いたとき、複数の解釈が生じたり、誤解を与えることがあってはならない。そして、作品の雰囲気を損なってはならない。 視聴覚障害者のための字幕、音声ガイドの制作は、日本語の言葉を一語一語チェックして、文字通り研ぎ澄ましていくプロセスである。 ![]() 字幕と音声ガイドが入った映画、バリアフリー映画の取り組みは始まってまだ間もない。作品の数も多くないが、上映施設の設備、そもそも私たちの社会そのもののあり方など、文字通り多くのバリアが存在している。そんな中、ボランティアやNPOの手で始まったバリアフリー上映に出資する企業も出始めている。 「西の魔女が死んだ」。児童文学のベストセラー小説を映画化するにあたって、バリアフリーへの道が選択された。作品の中で、魔女=英国人のおばあちゃんが、学校にとけ込めない中学生の孫娘に語りかける。 「人はみんな幸せになれるようにできているんですよ」。 多くのメッセージを含んだ映画作品の試写会が、東京のある小学校で行われた。会場の体育会館には、生徒とともに視聴覚障害者の姿もあった。 学校やPTAなどと入念な打ち合わせを経た試写会は、多くの実験的要素を含んでいる。 視聴覚障害者とともに体験するバリアフリー映画。そして、映画の中で語りかける「おばあちゃん」のメッセージ。生徒たちがそこで感じたものは、何だったのだろうか。そして、真のバリアフリーとはどういうことなのだろうか。 取材・報告:岩城浩幸(TBS報道局解説委員)
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