1999年、山口県光市で起きた母子殺害事件。被告の元少年に死刑判決が下るのか、差し戻し控訴審判決が注目されている。 一方で、この事件をめぐっては、「行き過ぎた報道」、「一方的な制裁報道」が指摘されるなど、事件報道のあり方そのものが問われる場面もあった。タレント弁護士の扇情的な発言により「弁護団懲戒請求騒動」が起きたことも記憶に新しいところだ。 ジャーナリストの綿井健陽さんは、マスメディアが流す報道をいったん疑って、自らの目と耳でこの事件を再検証することにした。これまでイラク戦争取材などを通して、綿井さんはマスメディアが流す情報と取材現場との間に、大きなズレがあることに気づいていた。 「予断を排除して、まずは現場に飛び込むのが自分の仕事…」 綿井さんはこの事件についてもそう考え、法廷での傍聴は勿論、被告の元少年への面会、事件現場の取材などを繰り返してきた。そんな綿井さんの取材活動に密着し、光市事件を別の角度から再検証してみた。 そこで浮かび上がってきたのは、少年犯罪を大人と同等の裁判にかけることの是非、裁判があだ討ちの場と化してゆくことの危険性、センセーショナルな報道がもたらす弊害、などであった。問われているのは被告の元少年だけではなく、事件を取り巻く社会そのものだったのである。 裁判員制度導入まであと一年…。事件報道のあり方を問う典型的なケースとして、差し戻し控訴審判決が目前に迫った光市事件について、あらためて考える。 取材:秋山浩之(TBS報道局編集部) |
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