![]() ![]() 音楽というのは、先ず聞くこと。それも1回や2回ではなく、何百回も聞くこと。すると、おもしろさが「おのずとわかってきます。絶対にわかってきます」。こう断言するのは、一中節(いっちゅうぶし)という三味線音楽の流派の十二世家元、都一中(みやこ・いっちゅう)さんだ。 三味線弾きとしての都一中さんは、舞台での公演に加え、90年代から旺盛な三味線の普及運動をつづけてきた。舞台以外で弾いたり語ったりすることが異端視されがちなこの世界で、その啓蒙活動は多くの人を刺激し、楽しませ、邦楽の世界へといざなっている。 ![]() 都一中さんの解説つきコンサートは、たんに三味線だけでなく、邦楽全般、ひいては江戸から近代に至る古今の芸能、文化を渉猟して聞くものを魅了する。その都一中さんの「レクチャー・コンサート」を中心に、三味線音楽の奥深さを紹介する。 三味線は元来、庶民の熱狂を誘う革命的音楽の中心にあった。庶民が自由に作り変え、自由に演奏し、なにものにも縛られない自由の楽器だったのである。西洋音楽一辺倒の学校教育は、いまや三味線の音色を日常から縁遠いものにしてしまった。そのことによって失ったものの大きさを、私たちはなかなか理解できない。こうして失われたもののひとつは、この世には西洋音楽とはまったく異なる価値観、世界観、哲学をもった別種の音楽が無数に存在するということへの想像力だろうか。 |
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