
マリ共和国北部のトンブクトゥは、サハラ砂漠の南の端に栄えた交易都市。その昔、広大な砂漠を何百頭ものラクダのキャラバンが行き交った時代、この街の繁栄ぶりは伝説となって、中東や遠くヨーロッパまで伝えられた。 |
 |

スーダン様式(トンブクトゥを中心に、サハラと西アフリカ各地に広まった独特の装飾を持つ日干し煉瓦作りの建築)で建てられたサンコーレモスクは、かって中東からも学生を集めた大学だった。交易と同時にイスラーム化を押し進めたマリ帝国は、多くの神学者を呼び寄せ、ここは法律や歴史、医学、天文学などが広く研究される学術としても成長していった。 |
 |

今もトンブクトゥの市場には、サハラ砂漠で採った塩が売られている。この街の繁栄を支えたのは、実は、サハラの塩と南の森林地帯でとれた黄金との塩金交易だった。当時は塩は貴重品で、金の産地では塩と黄金が同じ目方で取り引きされたという。 |
 |

アフリカの気候変動でサハラは、その面積を広げつつあり、トンブクトゥの街は、容赦なく吹き付ける砂の猛威にさらされている。郊外の村はすでに砂に埋もれている。植林など対策が講じられているが、砂漠化を止める決定打にはなっていない。トンブクトゥは、1990年「危機にさらされている遺産」リストに登録された。 |
 |