金曜ドラマ「MIU404」金曜よる10時

インタビュー:vol10伊吹藍役 綾野剛

Q.ここまで伊吹藍を演じてきた感想をお願いします。

いい奴ですよね。眩しくて。風通しがよくて。そんな彼の底抜けの明るさで、一人でも照らせるよう、おこがましくも願いを込めました。伊吹が観ている人の“気付き”といいますか、きっかけになればと。金曜の夜にこの作品を見て次の日の朝が少しでも魅力的になっていたら。
「伊吹みたいな友達ほしい」と監督、プロデューサー、周りのスタッフみんなが現場でよく言ってくださいます。見た目とか年齢とか表層的な部分で評価されることが多い世の中で「伊吹みたいな人が一人でも増えてほしい」というのは、みんなの願いだと思いました。そして、そのみんなの願いが具体的で真摯だったことで伊吹藍は存在しました。誰かが思っていることを伊吹が受け止めて自分の言葉で発することで、魅力的なキャラクターになっていったのではないのかと思います。本当に真っ直ぐな男でした。

Q.志摩という相棒ができたことで、伊吹に変化が生じたと思う部分はありましたか?

伊吹の根底は変わっていません。太陽が大きく変化しないように、伊吹はずっと伊吹なんです。彼の中でいろいろ感じているところはありますが、気付いてもらいたいような表現もしないし、自分が気付いていればいいと思っている。だから、何も変わってない。そして、志摩は伊吹が変わるための材料ではなく、新しい想いや感情を生み出してくれた大切な人。なくてはならない相棒として、一生彼を理解する勇気や彼を愛おしいという感情に対して、全力で向き合っていきたいと思えた人が生まれた。だから変化ということではないんです。何かを得る時に何かを捨てない。恐ろしい程の足し算で、精神キャパシティが海のように広い。そして伊吹は基本的に過去にとらわれない。現在進行形で、今起こっていることにしか目を向けないのが伊吹。そんな彼がガマさんのことで初めて過去に立ち返ったわけです。ただ、伊吹の「いつだったら止められた?」というセリフは、現在進行形に向き合ったから出てくる言葉であって、誰かの影響を受けたからではない。だからこそ伊吹の事前情報は"足が速い"だけだった。月のように満ちたり欠けたり変化するタイプではなく、どこから見ても同じように見える太陽みたいな人。昇るか沈むかだけ。そういう意味でヒロイックさの象徴のような存在なので、志摩の存在があってこそ、生きていて毎日が魅力的でした。

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Q.撮影現場ではアドリブもたくさん飛び交うなど、キャストスタッフが一丸となってブラッシュアップされていくのが印象的でした。

確かに台本に記載されていない表現や表情が生まれる事は多々あります。特に伊吹に関しては現場で感じた事を素直に反応反射する。ですが台本に記載されていないだけで書かれてないわけではありません。もっと極端に言うと、アドリブというものは一つもない。野木さんの脚本力と監督の演出力、そして現場の総力が、役者をその琴線に触れさせた。言い換えれば台本がなかったらアドリブも生まれないですし、結局台本には細かく"書かなかっただけ"で実際は書かれている、ということなんです。だから「実はこれ台本になかったアドリブですよね」と言われると死ぬほど恥ずかしい。アドリブほど隠したいものはありませんから。誰にも気づかれないがちょうど良いんです。

Q.印象に残っているシーンを教えてください。

「機捜っていいな、超いい仕事じゃん」これですね。伊吹の言葉。なんか久々に根っこから笑っちゃいましたね。自分の仕事を超いい仕事とあっけらかんと言う伊吹にシビれ、心が震え熱くなった。感動しました。

それと、全員に共通して印象に残っているのはみんなの眼差しです。「自分たちは彼らみたいに世界をちゃんと見つめているのか」と感じましたし、もっと見つめる努力をしていかなければいけないなと思いました。志摩、九重、陣馬さん、桔梗隊長、そしてゲストの皆様の眼差しが、本当に美しかったです。

Q.改めて『MIU404』は綾野さんにとってどんな作品でしたか?

2月にクランクインして、その後、新型コロナウィルスの影響で撮影が中断し、再開して今に至っている中、不要不急だと一番思われるであろうエンターテインメントを届ける使命や刹那的な魅力を改めて感じましたし、そんな中でこの作品と出会ったことで「ここからだ」と立ち上がれました。

Q.最後に最終回に向けて一言お願いします。

新しい刑事ドラマ、新しいバディを掲げ今日まで走ってきました。新しいを作るではなく、むしろ新しいをスタンダード化することが遥かに難しい。ですが「MIU404」は皆様に愛された事で、新しいスタンダードを打ち立てることが出来たと思っています。「ニュースタンダードMIU404」を是非一緒に見届けてください。そして志摩、第4機捜のみんな、心からありがとう。

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