合唱監修・福永一博先生のオモコー合唱紹介コーナー

このドラマの合唱監修とその指導を担当されている福永一博先生が、各話で歌われる合唱曲について、その魅力や豆知識などなどを紹介してくれるコーナーです。

福永一博（合唱指揮者、声楽家）
東京藝術大学音楽学部声楽科卒業、同大学大学院音楽研究科修士課程声楽専攻独唱研究分野修了。在学中にharmonia ensembleを設立、同団を率いて第40回フロリレージュ国際合唱コンクールグランプリ、第10回世界合唱シンポジウム招待出演等に導く。2015年度より一般社団法人化し、プロフェッショナルの室内合唱団として精力的に演奏活動を行っている。harmonia ensemble代表、コンサートマスター。Ensemble OASIS指揮者。東日本大震災復興支援「心に花を咲かせよう」プロジェクト代表。

はじめまして！『表参道高校合唱部！』で合唱指導･監修をしています、福永一博です。
このコーナーでは、ドラマで使われた合唱曲を、各話ごとにご紹介していきたいと思います！
「あのシーンで使われていた曲は何だったのかな？」といった疑問や、番組オリジナルの編曲作品の聴きどころなどを、お伝えしていけたらと思います！どうぞよろしくお願いいたします！

第1話の合唱曲

『涙そうそう』

このドラマの冒頭シーン、主人公の香川真琴(以下真琴)が、フェリーに乗って小豆島を旅立つ際に、大部高校合唱部のみんながお別れに防波堤に立って歌っているシーンで使われていた曲です。
真琴と合唱部との絆のあかしでもあるこの曲は、ドラマ中盤で、真琴が合唱部員を勧誘するために中庭で一人歌うシーンでも使われています。
原曲は、森山良子作詞、BEGIN作曲、森山良子により1998年にCD発売されました。その後、2000年にBEGIN、2002年に夏川りみによりカヴァーされ、多くの人に知られるようになりました。
もともとこの詞は亡くした兄を想って作られたものでしたが、現在はより広く、別れの時の歌としても歌われています。
今回このドラマのために、新たに混声四部のア･カペラとして編曲されました。小豆島の海辺に打ち寄せる波を思わせるヴォカリーズから始まり、切なく語る前半部、旋律を美しく力強く歌いあげる中間部、そしてまた語りに戻り、ヴォカリーズで閉じる構成になっており、和声的に重厚感のある編曲になっています(編曲：井上一平)。
演奏は数々のコンクールで優秀な成績を修めている名門、千葉県立幕張総合高校合唱部の皆さんが、多忙な合間を縫って素晴らしい演奏をして下さいました。

『大地讃頌』

香川真琴が転校生としてクラスで自己紹介する際に、クラスメートから「歌ってみて？」と言われて歌う曲です。
大木惇夫作詩、佐藤眞作曲、1962年に混声合唱とオーケストラのためのカンタータ「土の歌」の終曲(第７楽章)として作曲されました。現在は卒業ソングとして広く歌われているので、知っている方も多いと思います。
もともとのオーケストラの伴奏による大地讃頌は、ピアノ伴奏とはまた違った壮大な魅力を持っています。組曲の他の作品も、魅力的なものばかりなので、是非聴いてみてください。

『信じる』

真琴が合唱部の部室がある旧音楽室に近づくと、歌声が聴こえてきて、期待に胸を膨らませドアを開けると、ラジカセが鳴っているだけだった…というシーンで流れている曲です。
谷川俊太郎作詞、松下耕作曲によるこの作品は、2004年度の第71回NHK全国学校音楽コンクール中学校部門の課題曲として作曲されました。繊細で美しいピアノ、優しくも力強いメロディーの魅力溢れるこの作品は、課題曲というくくりを越えて、今でも多くの人に歌われています。ドラマ内の演奏はharmonia ensembleによるものでした。

『気球にのってどこまでも』

鈴木有明が小学校で教育実習をしていた時に、真琴に歌の語源を教えるシーンで生徒が歌っていた曲です。
東龍男作詞、平吉毅州作曲のこの作品は、1974年の第41回NHK全国学校音楽コンクールの小学校の部課題曲として発表されたものでしたが、小学校の教科書にも載っているので、親しんだことのある方も多いと思います。
演奏は、子役の子達が、元気いっぱいに歌ってくれました。

『大きな古時計』

真琴の家族は、合唱大好きな一家で、いつも歌声が聴こえていました。その回想シーンで家族みんなで歌っている曲です。
オリジナルは、ヘンリ・クレイ・ワークの作詞、作曲によりアメリカのポピュラー･ソングとして発表されましたが、日本では1962年にNHK「みんなのうた」で、保富康午の訳詞によってとりあげられ、広く知られるようになりました。
今回は、このドラマのために新たに編曲され、ドラマの演出に沿って、子供達が主旋律を、お母さんがアルトパートを、お父さんが男声パートを歌う、混声三部編成になっています(編曲：井上一平)。
演奏は、キャストの皆さんが、小豆島で本当の家族のように温かな歌を歌ってくださり、収録現場はとても幸せな雰囲気に包まれました。

『Over Drive』

引田里奈がネコ娘としてネット動画にUPしている曲です。そして、それを見た真琴が、鈴木有明にアレンジを依頼し、体育館で合唱発表する、一話のメインシーンで使われる曲です。
『Over Drive』は、JUDY AND MARYによって1995年に発表され、人気を博しました。
このドラマの魅力のひとつに、広く知られているポップスを合唱にすることで「新しい魅力を持った作品として伝えたい」ということがあります。
今回『Over Drive』の原曲のもつ疾走感･ビート感を生かしつつ、合唱ならではのハーモニー･掛け合いの楽しさ溢れるア･カペラの混声四部編成として、新たに編曲されました(編曲：井上一平)。
合唱部員のキャスト達は、クランクインの一ヶ月前から、さながら本当の合唱部のように毎日3～4時間の合唱の基礎練習を行い、クランクインしてからは多忙な撮影の合間を縫って、この曲の練習を行ってきました。
そんな彼らの努力が、この『Over Drive』の生き生きとした演奏にあらわれていたと思います。これからも一話ごとに成長を続ける合唱部員の歌声を、どうぞ御期待下さい！

以上が第1話で演奏された合唱曲でした。このドラマのために新しく作られた編曲は、『＠ELISE（アットエリーゼ）』から楽譜が配信されているので、是非皆さんも歌って下さいね。
さあ、第2話ではどんな合唱曲が登場するのでしょうか？どうぞお楽しみに！