インタビュー

[第六回]黒村径子 役 / 尾野真千子さん

Q黒村径子役を引き受けた時のお気持ちは?

私、この時代を演じるのが好きなんですよね。戦時中を舞台にした作品やもんぺを履く役は実際に多いですし。今回お話をいただいた時も、やりがいがあるなというのがまずあって、今までとはまた違う自分を見られるかもしれない、そんな期待感を持って臨みました。
もう一つは、脇役の楽しみですね。主役を支えてみたり、時には自分が前に出たり。いろいろできるのが脇役の面白さ。ただ、径子の出番が思っていた以上に多くて、またよくしゃべるんですよ。意地悪な人って大抵おしゃべりでしょ?けっこう大変です(笑)。でも、お芝居で若い人や新しい人に対して、ちょっと意地悪言っちゃおうとか嫁いびりしてみるとか、演じていて楽しいです!

写真

Qでも本当は優しい径子さんですよね?

最初の頃、お母ちゃんがすずに言っていた「(径子は)優しい子なんよ、ほんまは」って。実はあの一言をずっと胸に演じています。いろいろな場面で、自分で自分に径子のキャラクターを問いかけますが、「本当は優しい」が根本にあるから、意地悪の中にも優しさが出てくるんじゃないかな。お母ちゃんがそういうふうに見てくれているということが、径子を演じる軸になっています。

写真

Q母親役の伊藤蘭さんとご一緒していかがですか?

蘭さんとのお芝居は、この作品の楽しみの一つです。蘭さんご本人が本当に優しい方。だから、撮影でお母ちゃんをパッと見た時に私のことを見てくれていると、「あぁ、見てくれてる」って、すごく安心できます。どんなことをしても径子に戻れるというか、径子として一本通せるというか。蘭さんのおかげでブレないで径子ができます。
それと、画面の端っことか、ほかの人がお芝居している奥の方とかで、2人で目を合わせたり、納得し合ったり。そういう母と娘がちょこちょこっと何かやるのを楽しんでいます。実際、家族ってそういうところありませんか?見た方がそれに気づいて、クスクスッと笑っていただけたらうれしいです。

写真

Q撮影の時、尾野さんは本番直前までごく普通にお話されていますが…。

早くから気持ちを作っていると冷めちゃうんです(笑)。どのシーンも、今この瞬間に起こったことだって新鮮に受け止めたいから、なるべく直前まで違うことを考えるようにしています。動きや表情を考えて来ても、その場に立つと全然違うから、むしろ覚えたことが邪魔になることがあって。だから、家でセリフを覚えたらすぐ寝る!本番が終わったらすぐ忘れる!(笑)
ただ、いったん撮影現場に入ったら、その日の出番が全部終わるまで現場にはずっといますね。控え室に戻って一人になると、素の自分になっちゃうから。現場の空気の中に身を置いて、先のセリフを少し予習したりして、役から完全には離れないようにしています。その方がセリフも頭に入りやすいんですよ。

写真

Q土井監督、吉田監督とは初めてだそうですね?長いお付き合いかと…。

自分でも本当に失礼とは思いますが、土井裕泰(のぶひろ)監督のことを「のぶりん」、吉田健監督のことを「けんちゃん」と呼ばせていただいています(笑)。これは私の一種の緊張のほぐし方なんです。初めてご一緒させていただく監督に対して、ものを言うのを躊躇したり、自分が小さくなってしまわないように。思い切って呼び方から仲良くさせていただこうっていう。
径子は実家のことや子どもたちのことで気持ちの揺れが大きいですし、ちょっとした短いシーンも共感してもらったり、クスって笑ってもらったりしたいですからね。そのためには「こんなふうにしたいんですけど」って、何でも相談できた方がいいですから。あだ名で呼び続ける私を広い心で受け入れてくださっている監督に感謝です!

写真

Qドラマはかけがえのない日常がテーマですが、ご自身が日常で大切にしている時間は?

仕事をする時間、ぼーっとする時間、映画を見る時間…。全部の時間を大切にしたいですね。そのなかでも一番は、寝る時間!一日疲れきって帰るから、たくさん眠りたくて。そのために、セリフ覚えもできるだけ現場や帰りの車の中で効率的にやっています。

Qこれまでで特に思い出深いシーンや撮影は?

全部です。どのシーンも私の思い出だし、分け隔てなく好きです。娘の晴美役の来泉ちゃんには子どもらしい子どもでいてほしくて、休憩中に一緒にお絵描きしたり、歌を歌ったり、踊ったり、ゲームしたり。笑うシーンの前は、大爆笑できるようにあえて子ども扱いしてみたり…。私も楽しい時間を過ごしてきました。彼女自身も誰に対しても「かまって、かまって」っていう感じで飛び込んでいくんですよね。そうかと思うと、演技に関しては大人たちが思っていることを一生懸命考えて、周りをよく見てやっています。すごく賢い子。大好きです!
そういう来泉ちゃんとの現場の日常の一つ一つが、7話(9月2日放送)の径子のお芝居に自然につながりました。他のキャストの皆さんも、たぶん同じ思いだったと思います。

写真

Q娘の晴美が亡くなってしまう、悲しい7話でしたね。

台本を読んだ時に、娘を亡くして大泣きするというお芝居が、安次郎さんと2人のシーンで良かったって思いました。安次郎さんは昔からあの井戸端に座って、いろいろなものを見てきて、近所の人たちの話を聞いてきた人。ある意味、身内。そういう人のそばって安心できますからね。だから私も径子として心をさらけ出して大泣きできたんだと思います。
実は私も子どもの頃、仲のいい近所のお爺ちゃんがいたんです。外に出ると必ずそこにいて、よく一緒に遊んだ親友のお爺ちゃん。まさに安次郎さんと重なるような存在でした。

写真

Q7話の撮影を通して感じたことは?

この7話の撮影は、晴美がいかにすごい存在だったかを感じた期間でもありました。北條家にやって来てわずか1年と少し。その間、お母ちゃんのためにも自分のためにも、子どもパワーを全面に出して、みんなに受け入れられようとしていましたからね。それは撮影現場での来泉ちゃんにも重なります。彼女がいろんなものを残してくれたから、娘を亡くした母の胸中というものを頭で考えるのではなく、私自身の心が本当に震えました。
径子はもちろん、北條家や近所の人たちのこの悲しみは、「晴美はちゃんとそこにいたよ」っていう証。そう思ったら、「あんた、ホント強い子だねぇ」って思えて、とめどなく涙が溢れました。

写真

BackNumber

  • 尾野真千子さん

  • 仙道敦子さん

  • 伊藤 蘭さん

  • 村上虹郎さん

  • 松坂桃李さん

  • 松本穂香さん

ページの先頭に戻る