インタビュー

[第五回]浦野キセノ 役 / 仙道敦子さん

Q女優のお仕事は23年ぶりということですが、現場はいかがですか?

少しずつ仕事を始めたいと思っていたところに、今回のお話をいただきました。23年前に出演したのがTBSの『テキ屋の信ちゃん』シリーズで、土井裕泰監督だったんです。今回もその土井さんの演出で、原作自体も本当に素晴らしいので、正直いきなりこんな大役をという不安はありましたが、参加させていただこうと決めました。 俳優の皆さんと初めて顔を合わせたのが、撮影前の衣装合わせです。内心「どうしよう、どうしよう」という感じでしたが、土井さんが小さな声で「おかえりなさい」と言ってくださり、私も自然に「ただいま」って。その時に、ああスタートするんだなと思いました。

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Q実際にキセノを演じていかがですか? 

最初の撮影が、娘すずのドキドキのお嫁入りシーンでしたが、私自身がもうドキドキでした(笑)。懐かしい緑山スタジオで、素晴らしい俳優さんたちや立派なオープンセットに助けられて自分がその場に立っていたという感じですね。
キセノは子どものことを心配している普通の優しいお母さんですが、土井監督によく指摘されるのが「口調をもう少し強めに」ということ。やっぱりこの時代、優しいだけでは生きていけませんからね。これから回を重ねるとつらいことも出てくると思いますが、台本に忠実に、凛とした強さを持ったお母さんを演じていきたいです。
撮影に入るまでは不安もありましたが、この作品の一員になれたことをとても光栄に思っています。

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Q第5話(8/12放送)でつらい出来事が起こりますね。

台本を読んだ時からウッときてしまいました。シーンの詳細は控えさせていただきますが、演じながら1、2話のことがフラッシュバックしましたし、いつも気丈なキセノが子どもたちの前で感情を爆発させる場面なので、事前にあれこれ考えるよりも、現場で皆さんとご一緒する中で思いきりやらせていただこうと。それをお母ちゃん役の宮本信子さんが受けとめてくださったという感じです。自分でもちょっと感情の調節ができないほどでしたが、宮本さんのおかげで撮り終えることができました。
戦争を扱った作品は過去に何本か経験がありますが、これはごく普通の日常を描いているだけに、その怖さや悲惨さをより感じます。私自身も家族を持った今、この作品を通してあらためて、今あるものをとても愛おしく、ありがたいと感じています。

Qほかにもこれまでで印象的なシーンはありますか? 

全てですね。演じているのがどれも子を思う母親の姿なので、全部心に残っています。みんな子役の子ども時代に始まり、イキがっていたお兄ちゃんは戦争に行き、すずちゃんはお嫁に行き、すみちゃんもすっかり年頃の娘になって。感慨深いです。
私も22歳の長男、18歳の次男、12歳の長女と3人の子育てをしてきたので、今回はすごく短い期間でその縮図を見ているよう。時代は違っても、親の気持ちや通る道は同じなんだなって。
それに、私は浦野家でのすずちゃんしか現場で見ていないので、日曜日のオンエアで北條家の場面を見ると、もうほんとに「すずちゃん、頑張って」って力が入ってしまいます(笑)。

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Qその浦野家の撮影はどんな感じでしょう?

浦野家は「すずちゃんはこういう家で、家族とこういう会話をして育ってきたんだな」ということを感じていただけるような、温かい家庭になればいいなと思って撮影しています。
実際に、カメラが回っていない時もお父さん役の石本さんを中心にすごくアットホームですよ。「浦野家でスピンオフができるね」なんて冗談で言えちゃうくらい、楽しい現場です。
休憩中に穂香ちゃんと紗友ちゃんがおしゃべりしてクスクス笑っていたりすると、私も仲間に入りたくなるくらい。かわいくて仕方がないです。
石本さんは、柱にぶつかったり転ぶお芝居もすごく自然で、転んだあと足だけ画面に残っていたりして、さすがですよね。今度私も教えていただこうかと思ってますけど・・・そんなシーン私はないですよね(笑)。

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Qヒロイン役の松本穂香さんの印象は?

たぶんすごく緊張してこの作品に入ったでしょうし、大きなものを抱えて現場にいると思うんですよ。でも、変に無理していないというか、とっても素直に自然体で撮影に臨んでいます。だからスタッフの皆さんを含め、周りが自然と彼女を応援したくなる雰囲気があります。
2話で、里帰りしていたすずが再び呉に戻って行った後、キセノが「頑張れ、すず」ってつぶやくシーンがありましたが、まさに私も穂香ちゃんと離れていてもそんな気持ちでいます。

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Qご自身が日常で特に幸せを感じる瞬間は?

幸せは、わりとその時その時でよく感じるんですよね、感動しやすい人間なので(笑)。子どもの病気やケガが治った時は健康のありがたみを感じて幸せな気持ちになりますし、家族5人がたまに揃うと、私はものすごく忙しいんですけど、その忙しさがけっこう喜びだったり…。そんな日々の繰り返しです。そういう中でも、何でもない時に5人が揃ってご飯を食べている時は、ああ幸せだなと感じます。

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