インタビュー
［第一回］北條（浦野）すず 役 ／ 松本穂香さん
Qすず役に決まった時のお気持ちは？
オーディションで選んでいただいた時は信じられなくて、「私が日曜劇場のヒロイン？」って。後からじわじわーっと、すずさんを演じられるうれしさが来ました。オーディションではごく自然にすずさんの気持ちになれましたし、脚本を岡田惠和さんが書かれるというのも演じたい大きな理由でした。以前出演したNHKの「ひよっこ」も脚本が岡田さんで、その世界観が大好きで、また岡田さんの世界に入れるという喜びは本当に大きいです。
今回、すずさん役に決まってすぐに舞台の広島に行きましたが、あらためて「この世界の片隅に」は素敵な作品だし、素敵な役だなと、気持ちが引き締まりました。
Q今回の脚本を読んだ感想を教えてください。
ふふって笑えるところや、なんかいいなぁと思うところがたくさんあって、とても温かい世界だなと思いました。一言だけのセリフにも、カッコで気持ちが書かれていたりするんです。例えば、「（怖い）はい」とか「ありゃ（どうしましょ）」、「・・・（感動）」とか。そういうのがすごくかわいらしくて、役への愛着がより湧きますし、ト書きを含め全部が愛しくなる台本です。新しい本を読むのがいつも楽しみです。
Qすずの人柄や役作りに関して教えてください。
すずさんは自分の気持ちにまっすぐで、正直な人です。人からよく「ボーッとしている」と言われますが、ただボーッとしてるわけではないと思うんですよ。人の気持ちに敏感で、自分の中でいろいろ考えてるから、それですぐに返事ができなくて、他の人よりも１、２拍反応が遅れちゃうんじゃないかなと思うんです。そういうすずさんの人柄もペースも魅力だと思うので、大事に演じたいです。実は私もボーッとしているとよく言われるので、そのお芝居は自然にできるかなと思ってます(笑)。
一方で、すずさんは思い込んだらすぐに行動してしまうところもあって、周りに流されない芯の強さも感じます。
Q松坂桃李さんと、松坂さん演じる周作については？
松坂さんはすごく爽やかで、優しくて、頼れるお兄さんという感じの方です。現場でもしんどい顔を見せたり、不満を言ったりが全然ないんです。結婚相手の周作さん役が松坂さんでほんと良かったなって思います。周作さんって、普段はあまりものを言わないけれど、大事なことはちゃんと言ってくれるし、優しいし、毎日弱音を吐かずに働いていて、本当に理想的な旦那さんだと思います。
今の時代、初対面の男性の元に嫁いで、翌日からその家族のために家事をするって、ちょっと考えられませんよね？ すずさんは旦那さんが周作さんみたいないい人でほんと良かった！ 2人は交わす言葉は少なくてもしっかりつながってるし、私にはうらやましい夫婦です。
Q戦時中の話ですが、何か感じることはありますか？
戦争を題材にした作品というと、つらいとか重いという印象がありましたが、このドラマは普通に生活している人たちのお話。笑えるところもたくさんあるし、明るくて前向きです。実際、登場人物たちはたまたまその時代に生きただけで、今の私たちと同じように、毎日喜んだり、悩んだり、笑ったりしてたんですよね。そこに戦争という恐ろしいことが起きてしまったわけで…。私自身、これまで戦争を別世界の出来事のように漠然と捉えていましたが、そうではないことを今回知りました。ぜひ多くの方にこのドラマを見ていただきたいです。
Q役を通して当時の生活を体験していかがですか？
かまどに火を起こしたり、一日に何度も天秤棒を担いで井戸に水を汲みに行ったり、食べ物もあまりなくて、本当に不便ですよね。実際、炊事シーンの撮影は、火加減の調節が簡単にできないからすぐに焦げちゃうし、煙もすごくて…。でも、そういう作業の一つひとつに、きちんと生活してるなっていう感覚がすごくあります。モノの大切さやありがたみも強く感じて、モノが溢れている現代は本当に贅沢だなって。考えさせられることがとても多い現場です。
Q座長として、どんな気持ちで臨んでいますか？
頑張れ！って自分に言ってます(笑)。もし落ち込むことがあっても、そういう姿は見せないようにしなくてはと思っています。でも、そういうのが全部顔に出てしまうことがあるので・・・だから、自然体でいるように心掛けています。撮影の合間も共演の皆さんがいろいろ声を掛けてくださって、和気あいあいとした感じです。スタッフさんたちからも「穂香ちゃん」ではなくて、ずっと「すずさん」って呼ばれてるんですよ。「すずさん、ちょっといい？」とか「ありがとう、すずさん」とか。それがすごくうれしいです。
私はお芝居の経験も少ないので、うまくやろうとはせず、まずはご一緒している素晴らしい俳優の皆さんから感じたことを大事にして、明るく前向きに生きるすずさんを精一杯演じていきます。