11月5日放送
101歳のことば ~生活図画事件 最後の生き証人~

絵を描いただけで逮捕される。いまでは信じられないことが、太平洋戦争直前に北海道旭川市であった。

「生活図画事件」と呼ばれるこの事件は、現在の北海道教育大学旭川校美術部の学生など20人以上が検挙された。彼らが逮捕された理由は「治安維持法」違反。「生活図画」=身の回りの生活を見つめ、ありのままを描くことさえも許されない時代がかつてあった。

この事件の被害者の1人、旭川の老人ホームで生活する菱谷良一さんはまもなく102歳を迎える。19歳の時に検挙され、何気ない日常を描いた絵が「共産主義を啓蒙している」と決めつけられて、マイナス30度を超える極寒の刑務所などに1年以上投獄された。

事件から82年。事件の犠牲者は菱谷さんのみとなった。亡き友の遺志を継ぎ、老体に鞭を打ちながら「最後の生き証人」として声を上げ続けている。

共謀罪の成立や安全保障関連3文書の閣議決定など、「新しい戦前」と呼ばれ始めた最近の日本に、戦前・戦中・戦後を知る菱谷さんはいま何を思うのか。

製作:HBC
ディレクター:長沢 祐