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「所沢の誓い」〜2017年へ〜【2017年1〜2月号】


11月30日の昼下がり、衆議院別館の委員室に入ると、ちょうど秋元司内閣委員会委員長が「理事をして民進党のご出席を要請願しましたが、ご出席が得られませんっ」と声を張り上げた。前日の年金改革法案の強行採決に民進党議員が反発して入ってこないというわけだ。「成長戦略の目玉」と銘打ったいわゆるカジノ法案の審議が民進党席空席のまま始まった。

提出者の自民党の細田博之総務会長が答弁席に立ち上がり「観光及び地域経済の振興にに寄与するとともに財政の改善に資するものであることに鑑み…」と滔々と資料を読み上げ、さらに「適切な国の監修及び管理の下で運営される健全なカジノ施設の収益が社会に還元されることを基本として行われるものとすることとしております」と胸を張った。


丹羽宇一郎氏「プラスとマイナスと」(2016年12月4日放送)

丹羽:「私は、アメリカに10年以上いましたからね、アトランティックシティがそういう街に変わった時も。思いますのは、このカジノ問題の、プラス、マイナスと両方考えなくてはいけない。それから「これを成長戦略に」という話になった時に、ナンボの話なのと。どれくらい日本の経済にプラスになる計画なのと。そして後々の周辺の住民の生活。アトランティックシティの場合もそうでした。どんどんね、悪くなるんですよ。周辺に悪い人間も集まってくるんです。だから子どもの教育とか生活とか。やはりそれで滅びていくんですよ。日本の場合はどうなのか…」

最初の質問者は自民党議員だった。なぜ、「カジノ」を活用した観光振興の経済対策が必要かを言いたかったのだろうが、話を始めると「アベノミクスで第一の矢、超金融緩和をしたが、そのことによって必ずしも思ったほどの効果が出ていない。第二(の矢の財政出動)については膨大な借金によってこれも思うように動かせない。第三(の矢の成長戦略)についてのイノベーションですが、これも国立大学の独法(独立行政法人化)の結果、(運営費交付金が)10年で1450億円も切った(減少した)、大変な状況下にあります」と、「アベノミクスの行き詰まり」を説明するような格好になり、自民党席では苦笑いだった。

提出者の岩屋毅議員(自民党)は「例えば、ギャンブル依存症の問題、それから治安がもしかすると悪化するのではないかとの懸念。あるいは青少年に悪影響を及ぼすのではないかとのというような心配。あるいは社会悪、組織悪の関与があるのではとの懸念。こういったリスクをですね、最小限に抑制する措置を…」と答えた。民進党議員がいないのでヤジも飛ばず、与党席では寝ているように見える議員もいて、「『わかっちゃいるけどやめられないっ』てかあ」「だったらカジノを作らないのが一番の解決策じゃないの」などと思わせる、つっこみどころ満載のやり取りが続いた。続けて「今回の法案においても不正行為の防止や、有害な影響の排除のための必要な措置を政府に講じなさいということを命じておりますっ」聞いていて「やれやれ」と思った。

さらに細田総務会長は先行するシンガポールの施設(安倍晋三総理が視察をして「成長戦略の目玉になる」と言ったものなのだが)を挙げ「2013年においては海外旅行者数が導入前の2009年と比較して60%増の1550万人に、また海外旅行者の消費額が観光、娯楽、賭博、宿泊、ショッピング、飲食における増加を中心に約90%増、約1.9兆円となっており…」と資料を見ながら「成功事例」を語り、「今や大人から子供まで家族全員が楽しむことができる総合エンターテイメントシティーに変貌したっ」と声を張り上げて見せた。

昼下がりの審議は続き、くだんの質問の自民党議員は、いきなり「現実は闘わなければ生きていけない。すべての動植物がそうです。人間もそれから逃れることはできません」などと言い出した。怪訝に思って聞いていると、「一次産業はどうやって闘っていくのか」「人件費の安いところに負けるのは当たり前なんです」「グローバリズムが進むほど、一次産業はやられていくっていうのは当たり前なんですね。そこを無視して農業改革をやろうとしたり、それから合理化が進むからますます地方が疲弊していく。それなら何で地方を救っていくのか」と「持論」を展開し、「カジノ法案」の必要性を説明し出した。

なにやらうんざりし、委員会室を後にした。(この議員が、この後、質問時間が余り、「あまりにも時間が余っているので」などと言い出し、ついには「般若心経」を唱えだしたというのをのちに新聞で知ったのだが…)。この日も含め5時間30分の「審議」で、いわゆる「カジノ法案」は衆議院を通過した。


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