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「遺言」〜怒れる野中広務 【2014年7〜8月号】


「国民の神経の磨滅」

衆議院の予算委員会の部屋に入ると、すでに安倍総理への自民党の質問が行われているところだった。安倍総理は胸を張ってマイクの前に立ち「機雷が敷設され、、危険にあう可能性が高い中、各国が協力して機雷掃海をしているにもかかわらず、その能力に秀でるわが国が機雷掃海をできなくてもよいのかっ」と滔々と説明していた。記者席の最前列の空いているところに座り、しばらく、「与党質問」のやり取りを聞きながら、数日前、野中氏がスタジオで鬼気迫る顔で話していたのを思い出した。そうあの収録の後で、司会者の御厨貴氏と、もう一人の出演者の増田寛也氏が、化粧室に戻るなり、顔を見合わせて「野中さん怖かったねえ」と話し合っていたのだ。それほど、の形相での語りだったのだ。


「攻撃すれば、必ず攻撃される」野中広務氏(5月25日放送)

野中: 私はね、今日ほど私の人生を通じてね、憲法というのがこれほど問題になった時期はないと思うんですね。自民党と公明党との与党協議においても、憲法に触れないで解釈でこれを変えていくと。変えていってこれを集団的自衛権として行使した時には、安倍さんは皆さんの子どもさんや親たちを私が守らなければいけないんだ、国民の命と暮らしを守るんだと情緒的に言っておられましたけどもね、しかし、攻撃すれば必ず攻撃されるんですよ。過去の戦争はそのために多くの犠牲者を出して戦争に負けた訳です。来年で70年、この70年と言うのは、敵の攻撃を受けないで犠牲を出さないでやってきたという大きな証拠になってる訳ですから。そんなに簡単にその憲法に触れてもらいたくはないんです。そして、解釈を変えるのは論外の問題だと私は思ってます。

岡田克也氏の質問が始まった。すると岡田氏は、記者会見で安倍総理が朝鮮半島有事を念頭に、「日本人が乗っている米国の船を日本の自衛隊が守れない。それでいいのか」と説明したのを引き合いに「日本人を乗せた米国艦船以外の、第三国の艦船については守らなくてはいいのでしょうか」と、何やら安倍総理よりもさらに自衛隊の活動を拡大するかのようなことを質問しだしたのだ。これには安倍総理も「たとえば米国が傭船を行って、日本に対する攻撃が起こっていない時に、攻撃されたときは、現在はにおいては守ることができない。今、岡田委員は、それをさらに広げて、それが他国の船だったらというご質問でございますが、これは状況等によるわけでございまして…」などと、困惑の様子になった。

それでも、さらに岡田氏が「総理のご説明だと、それが米国の艦船なら自衛隊は集団的自衛権の発動で守るけれども、ほかの艦船は守れないと。それで本当に日本人を守ったことになるんですかっ。総理っ」となにやらヒートアップ。これに安倍部総理が「岡田委員は立場が決まっていないということをおっしゃったわけですね。立場が決まっていないということは、守らなくていいか悪いか…」などと論点をずらして切り返したので、民主党席から何やらヤジが飛んだ。すると安倍総理は説明をやめて「済みません、ちょっとやじるのは、…辻元さん、やめていただけますか。大事な…」とうんざりした表情を見せ、これに野党席に座っていた辻元氏が「名前を出すのはやめてくださいっ」と切り返したりして、部屋の中はヤジの応酬状態になった。


「きわめて限定した」高村正彦氏(5月11日放送)

高村: やっぱり相対的にアメリカの力が弱くなってきてんですよ。世界の警察と必ずしも言えなくなってきている。アメリカに土地さえ提供していれば、基地さえ提供していれば全部守ってくれるという時代ではなくなってますね。そうすると同盟を守るためには安全保障条約上の義務より一歩進んでやらなきゃいけないんじゃないですか。

必要最小限度の事をやりたい。なにもイラクに行って米軍と一緒に戦えと言う事を言っている訳じゃないんです。限定容認論というのはそういうことです。

その後も、「かみあわない議論」がずいぶん続いた。そして、岡田氏が立ち上がり「このことであまり手間取るつもりはなかったので、次に平和主義…」と、話題を変えようとすると、前に座っていた安倍総理がそこから「いや、今もっとやったほうが方がいい、わかっていないんだったら」と言うもんだから、岡田氏は「わかっていないのは私は総理だと思いますよっ。ですからあなたは失礼ですよ、そういう言い方はね。わかっていないからというのは失礼ですよ」とキレた。そして「一国の総理大臣なんだから、もう少し懐深く議論されたほうがいいですよ。発言も求められていないのに自席でヤジるように「わかっていない」などという言い方は総理として絶対すべきではないっ」と、興奮の面持ちでこえを張り上げ、またもや部屋の中は与野党入り乱れてのヤジで騒然となった。

岡田氏の持ち時間は45分。最後は「国会がずっと積み上げてきた議論をある意味で相当変える話ですから、これは国会議員一人ひとりにとっても真剣勝負だと思うんですよ。真剣な議論、慎重な議論を行っていくべきだ。そのことを最後に申しあげておきたい」と声を張り上げて質問を終えた。しかし、この後張り切って質問に立った民主党の若手議員は「私はTPPの問題について議論をさせていただきたいと思いますっ。日豪EPAに関して…」と、集団的自衛権の集中審議なのになんとも「元代表」のメンツ丸つぶれの質問。手元にあった、質問予定の要旨を見ると、午後の民主党質問者の紙には「消えた年金問題のその後について」とあった。なんだか悲しくなって、そのまま部屋を出た。


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