●「目を覆いたくなる事態」野中広務氏(2014年3月30日放送)
会社に戻ると、机の上になにやら共産党からの茶色の封筒が届いていた。長く政治に関わる仕事をする中でも、共産党には知人がいなかったので、怪訝に思って中を開けると「しんぶん赤旗 日曜版」(14年3月30日付)と、副編集長からの名刺が入っていた。名刺には「過日の『時事放談』に強くインスパイヤーされこのようなインタビューをしました」との添え書きが。見ると、一面に大きく藤井裕久元財務大臣と武村正義元内閣官房長官の写真つきのインタビュー記事が載っているではないか。
見出しは「安倍改憲、集団的自衛権行使容認」許さない」。
藤井氏は「戦争は勝っても負けても一般の人々はみんな犠牲者です。絶対に繰り返してはいけません。今の若い政治家は本当に戦争の事を何も知らない。それなのに勇ましいことばかり言っている。これは本当に怖い」
そして武村氏は「もちろん憲法解釈の変更は時代の変化である程度は許されます。しかし、憲法の大原則にかかわる平和主義、9条を『解釈改憲』で変えてしまうのはどう考えても荒々しい」と語っていた。インタビューを読み進むうちに共産党の機関紙にまで登場して、時代に警鐘を鳴らす2人に驚いた。確かに、2人は安倍総理が集団的自衛権の行使を憲法の解釈を変えて容認しようとしていることにスタジオで憤慨していたっけ。
●武村正義氏「とんでもない」(2014年3月5日放送)
案内状の返事が会社に戻ってきたのは、「挨拶」に回った数日後だった。見ると野中氏や藤井氏に加えて、古賀誠元自民党幹事長や、石破茂自民党幹事長、前原誠司元民主党代表、仙谷由人元内閣官房長官らそうそうたる顔ぶれが「出席」ということだ。中には、がんの手術を経て、「表舞台」を控えている与謝野馨元経済財政担当大臣や「河野談話」作成に深くかかわった石原信雄元官房副長官も「出席」だという。「そうだ10年前の思いを引き継いで新しく様々な論客が『参戦』してくれているのだ」と元気がわいてきた。そして、「これからがまたスタートだ」と、春の日差しの注ぐ窓際の会社の机でつぶやいてみたりした。
※本原稿は調査情報5〜6月号に掲載されています。
◆石塚 博久 (いしづか ひろひさ)
'62 東京都足立区生まれ。早稲田大学卒業後、'86日本経済新聞社に入社。大阪、名古屋、仙台支局(このとき、「みちのく温泉なんとか殺人事件」に出るような温泉はほとんど行った“温泉研究家”でもある)に。
東京本社政治部で政治取材の厳しい(「虎の穴」のような)指導を受け、新聞協会賞(「閣僚企画」共著)も。
'96TBS入社後は、報道局政治部記者、「NEWS23」のディレクターを経て、「時事放談」制作プロデューサー。

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