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過去の放送 出演者 時事放談「サロン」 テレビプロデューサーの日々
 
 

「目を覆いたくなる事態」野中広務氏(2014年3月30日放送)

野中: 韓国・中国との日本との今日のあり方は、我々にすれば目を覆いたくなるような悲しい事態ですし、一番大切な国とこんな対立をするというのは、日本のこれからのためにも早く解決しなくてはならない問題なんですが。オバマ大統領が見かねて仲裁に入って3カ国の会談が行われてね、安倍さんも気を使って韓国語で挨拶をされるという心配りをしておられますけれども、朴大統領は、もう安倍さんとは全く異なる表情で受け止められていた。どのようにして韓国・中国との歴史的な解問題を、過去の歴史に遡ってやっていくかという大切なところを、日本は考えなければいけないと思いますねっ。

会社に戻ると、机の上になにやら共産党からの茶色の封筒が届いていた。長く政治に関わる仕事をする中でも、共産党には知人がいなかったので、怪訝に思って中を開けると「しんぶん赤旗 日曜版」(14年3月30日付)と、副編集長からの名刺が入っていた。名刺には「過日の『時事放談』に強くインスパイヤーされこのようなインタビューをしました」との添え書きが。見ると、一面に大きく藤井裕久元財務大臣と武村正義元内閣官房長官の写真つきのインタビュー記事が載っているではないか。

見出しは「安倍改憲、集団的自衛権行使容認」許さない」。

藤井氏は「戦争は勝っても負けても一般の人々はみんな犠牲者です。絶対に繰り返してはいけません。今の若い政治家は本当に戦争の事を何も知らない。それなのに勇ましいことばかり言っている。これは本当に怖い」

そして武村氏は「もちろん憲法解釈の変更は時代の変化である程度は許されます。しかし、憲法の大原則にかかわる平和主義、9条を『解釈改憲』で変えてしまうのはどう考えても荒々しい」と語っていた。インタビューを読み進むうちに共産党の機関紙にまで登場して、時代に警鐘を鳴らす2人に驚いた。確かに、2人は安倍総理が集団的自衛権の行使を憲法の解釈を変えて容認しようとしていることにスタジオで憤慨していたっけ。


武村正義氏「とんでもない」(2014年3月5日放送)

藤井: 安倍さんは、「戦後レジームの脱却」という言葉を使ってますね。しかし戦後レジームを誰が作ったか。昔の自民党の人は大きな役割を果たしているはずなんです。集団的と個別自衛権はごちゃ混ぜにしていい様な事言ってたんですが、50年前からズバリこれを分けると。それはね、内閣法制局が言ったなんてあれ、総理大臣が是認してるんです。それが50年続いてる。それをね、今ひっくりかえそうとするのは、戦後レジームの脱却なんでしょう。だけれども、それはもはや自民党の本流の人から言わせれば許せない考え方だと私は思っています。私も昔、自民党におりましたからね、そういう感じも分かるんです。

武村: この問題は、一年前の今頃は安倍さんたちも割合まともな考えをしていたと。それは、憲法改正して集団的自衛権を広めよう、こういう発想だったんです。その時に憲法96条をまず変えよう、発議権をもっと簡単に出来るように二分の一にしよう、こういう考えが表に出てきて、これがかなり国民から反発を受けて、これはどうもこれは容易じゃないと。そういう状況の中である日突然、今度は解釈改憲、解釈で認めてしまおうという安易と言うべきか、そういう発想が出てきて、今その流れになってるんですね。およそ憲法の大きな原則を解釈で変えるなんてとんでもないと思いますね。

案内状の返事が会社に戻ってきたのは、「挨拶」に回った数日後だった。見ると野中氏や藤井氏に加えて、古賀誠元自民党幹事長や、石破茂自民党幹事長、前原誠司元民主党代表、仙谷由人元内閣官房長官らそうそうたる顔ぶれが「出席」ということだ。中には、がんの手術を経て、「表舞台」を控えている与謝野馨元経済財政担当大臣や「河野談話」作成に深くかかわった石原信雄元官房副長官も「出席」だという。「そうだ10年前の思いを引き継いで新しく様々な論客が『参戦』してくれているのだ」と元気がわいてきた。そして、「これからがまたスタートだ」と、春の日差しの注ぐ窓際の会社の机でつぶやいてみたりした。


※本原稿は調査情報5〜6月号に掲載されています。

石塚 博久 (いしづか ひろひさ)
'62 東京都足立区生まれ。早稲田大学卒業後、'86日本経済新聞社に入社。大阪、名古屋、仙台支局(このとき、「みちのく温泉なんとか殺人事件」に出るような温泉はほとんど行った“温泉研究家”でもある)に。
東京本社政治部で政治取材の厳しい(「虎の穴」のような)指導を受け、新聞協会賞(「閣僚企画」共著)も。
'96TBS入社後は、報道局政治部記者、「NEWS23」のディレクターを経て、「時事放談」制作プロデューサー。

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