●「10%だって腰だめだ」 片山善博氏(2月5日放送)
事業仕分けに取り組んだものの、「ムダ削減」の「皮算用」はうまくいかず、しかも、政治の手順のまずさが、国民の「政治への不信」を増幅させ、野田佳彦総理が「不退転の覚悟」を強調する一方で、ますます「実現」を遠ざけてきたわけだ。民主党政権のつけなのだ。
お茶に手をつけるのももどかしげに、塩川氏はしきりに「政治に危機感がない」と繰り返し、「自民党だっていまだに方針が言えないじゃないか」と語気を強めた。そして、「ちょっと仕事してええか。すぐ済むから」と言うと、なにやらワープロで書いた原稿に手を加え始めた。秘書が気を利かせてコピーをくれたが、なんと新聞の連載コラム(『産経新聞』「塩爺の もう一度よく聞いてください」12年2月10日付)なのだ。大変な気力である。
読むと、原稿には「今から40年前、高度成長期の日本経済を揶や揄ゆして『日本は花見酒に浮かれている』といわれたが、いまだに花見酒をあおり続けているようである。ギリシャ、イタリアと同じように、日本も深刻な債務危機に陥りかねない。『いつまで酒飲んで寝とるんや』と言いたい」と、なにやらすごい剣幕だった。そして、「一部の政治家はいまだに公共事業を増やさなければ選挙で負けると信じ込んでいる。世間受けするため消費税増税に反対する者も多い。しかし、このまま国家財政を放置すると債務だけが残り、少子化の影響で『ツケ』を払う若い世代や孫たちが最悪の事態に陥る」と、「学習」しない政治に厳しく喝を入れていた。
気がつくと窓の外も暗くなってきていた。塩川氏の熱気に、ついつい時間を忘れ長居してしまったようだ。挨拶をして、引き上げようと立ち上がると、「あったかくなったらまた肉、食いに行こうか」と、言ってくれた。「今度は、僕が出しますから」と言うと、「そうかあ。ふっふっふっ」とあの、「笑顔」で見送ってくれた。道すがら、「政局の鬼」の異名をもつ野中広務元官房長官も今の政治に警鐘を鳴らしていたなあ、と思い出した。修羅場の経験をした後、国会を外から見ているほうが、立場を超えて本当のことがよく見えるのだろう。そして、しゃべれるのだろう。
●「言った以上は…」 野中広務氏(1月22日放送)
JR新橋の駅にたどり着く前に、路地裏の赤提灯の波状攻撃のような誘惑に抗し切れず、そのうちの一軒に入った。目の前で炭火に香ばしく煙を上げながらジュージューと焼けていく焼き鳥を見ながら、さっきの「塩爺」のコラムの残りの件くだりを読んだ。「民主党内の増税反対論に屈して、一体改革をやり遂げられないのであれば、この政権もそれまでということだ」と、言い切っていた。「もうあまり、時間は残されていないんだな」としみじみ思った。客は私一人きりだった店も、サラリーマン客がだんだんと増えていて、すっかり焼き鳥の炭火の煙が立ち込めていた。喧騒の中で少しむせながらビールを飲み干し、「早く春よ来い」と、願った。
※本原稿は調査情報3〜4月号に掲載されています。
◆石塚 博久 (いしづか ひろひさ)
'62 東京都足立区生まれ。早稲田大学卒業後、'86日本経済新聞社に入社。大阪、名古屋、仙台支局(このとき、「みちのく温泉なんとか殺人事件」に出るような温泉はほとんど行った“温泉研究家”でもある)に。
東京本社政治部で政治取材の厳しい(「虎の穴」のような)指導を受け、新聞協会賞(「閣僚企画」共著)も。
'96TBS入社後は、報道局政治部記者、「NEWS23」のディレクターを経て、「時事放談」制作プロデューサー。

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だからこれ結局ね、結論先にありきで、ちょっきり10%、わかりやすいですから、10%にしたいというのが最初からの結論なんですよ。中身はあんまり吟味してない、ちょっと失礼な言い方になりますけど。
これね、細川内閣のときに国民福祉税構想(94年)というのを、ある夜突然、総理が発表しましたよね。それが、その場で中身のことを新聞記者に聞かれて答えられなくて、税率はいくつですかに、『腰だめの数字です』と言って、1日で潰ついえましたよね。あれと基本的にはそんなに変わらない構図なんですね。ちょっと一晩じゃなくて、相当続いてますけど