2019年4月スタート

用語解説

第1話

【 シャーガス病 】

寄生虫感染症の一種。吸血性のサシガメに刺され、原虫であるトリパノソーマに感染することで起こる。感染初期には無症状か、発熱・倦怠感など軽症で済むことが多い。中には長年にわたって症状が出ない人もいる。感染から10〜20年経過後、内臓の細胞に入り込んだ原虫が、臓器肥大、不整脈、心筋症、消化器症状などの症状を引き起こすことがある。特に、心筋に感染した場合は心機能低下により死に至ることもある。主に中南米で感染が確認されている。発症初期4週間ほどの間に投薬治療を行えば、回復の確率はかなり高くなる。

【 ロマーナ・サイン 】

ロマーナ(ロマーニャ)徴候ともいう。シャーガス病の発症初期の数週間程の期間に稀に現れる症状で、感染部位に近い方の目が腫れる症状(眼瞼腫脹)のこと。

【 トリパノソーマ 】

脊椎動物の血流中と吸血昆虫の腸管に主に寄生する原虫。単細胞である。0.01~0.07mmほどの大きさ。感染したサシガメの糞に含まれる。サシガメが吸血時に、刺されたヒトが手でうっかり傷口に触れたり、眼や口を触った時に、粘膜を通して人体に侵入し感染を引き起こす。

【 サシガメ 】

カメムシの仲間で、吸血性の昆虫。ヒトを刺すときに、刺し傷の周りに糞を落とす。眼の周りや口元を刺すことから、英語では「Kissing bug」とも呼ばれている。

【 ヌマエラビル 】

爬虫類のカメ類に特異的に寄生するヒル類の1種。高い耐凍性を持っており、-196℃の液体窒素への浸漬や、-90℃温度条件下でも、数ヶ月間にわたって長期間生存することができる。

【 ジョン・クラウリー 】

先天代謝異常の難病であるポンペ病の治療薬「マイオザイム」を開発したアメリカ人男性。経営コンサルタント会社に勤めるビジネスマンであったが、娘がポンペ病に冒されたのを機に、娘のために知識もないままに医療界に飛び込み、ポンペ病の治療法の研究に挑んだ。その後、製薬会社を設立した。

【 センメルヴェイス 】

イグナーツ・フィリップ・センメルヴェイス。1818年ハンガリー出身の医師。当時恐れられていた産褥熱は、診療に従事する医師などが汚れた手で、妊産婦を扱うためであると考え、診療の前に塩化カルシウム液で手洗いをすることで産褥熱の発生を防ぐことができることを明らかにした。しかし、当時は病原体の存在はまだ知られていなかったため、手洗いの重要性は理解されず、不遇のまま人生を終えた。

【 産褥熱 】

産後に産婦に起こる、発熱性の感染症。産道や子宮腔内の創傷が細菌に感染して引き起こされる。現在では分娩の際の十分な消毒や、抗菌薬の発達などで、重い産褥熱が起こることは少なくなっているが、細菌の存在が知られていなかった時代には、致死率の高い病として恐れられていた。

※ チチクチの実・チチクチオイル

こちらは現実に存在しません。ドラマの中の架空の果実です。

監修

嘉糠 洋陸(Hirotaka Kanuka)

東京慈恵会医科大学教授。1997年東京大学農学部獣医学科卒業、2001年大阪大学大学院医学系研究科修了、2011年から現職。専門は寄生虫学、衛生動物学。

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