特集

2018年8月26日「タプタプアテア」

謎の聖地を生んだ！不思議なサンゴ礁の裂け目

タヒチには、先祖を神として崇める独自のオロ信仰がありました。人を生け贄として捧げる血なまぐさい儀式も行うものでしたが、その聖地がライアテア島の海に突き出た岬でした。なぜこの場所が聖地となったのか？　その理由は、島を取り囲むサンゴ礁にありました。

──タヒチの人々の信仰は、どのようなものだったのでしょうか？

石渡：オロ信仰と呼ばれるもので、自分たちの先祖を神々として崇めるものです。聖地タプタプアテアではさまざまな祭祀が行われました。かつてマラエでは王が儀式を行い、神のお告げを聞きました。その儀式は、人を生け贄として捧げる血なまぐさいものだったといわれています。

タプタプアテアのマラエにある儀式に使われた石。人が生け贄として捧げられ、その血を石の穴の中に流し込んだと言われています。

──ライアテア島の岬が聖地となったのはなぜなのでしょうか？

石渡：ライアテア島は、島全体がサンゴ礁に囲まれています。ドローンで空撮した映像を見るとよくわかるのですが、聖地タプタプアテアがある岬の前にはサンゴ礁の裂け目があるんです。ポリネシア人は、このサンゴ礁の裂け目を神聖なものと考えました。王はこの裂け目で身を清め、先祖の神と一体になったのです。

サンゴ礁に囲まれたライアテア島ですが、聖地のある岬の前にはサンゴ礁の裂け目があります。ここは神聖な場所と考えられていました。

──自然が作ったサンゴ礁の裂け目が、ここに聖地を生み出したんですね。

石渡：はい。サンゴ礁の裂け目は周囲に比べて急に深くなっていて、ちょうど外海と島をつなぐ水路のようになっています。岬には、王の港と呼ばれる小さな砂浜があり、ここに船を着けられるのは王だけでした。裂け目は船が座礁する心配のない安全な水路でもあったので、実用的な意味でも重要な場所だったんです。

サンゴ礁の裂け目がどうなっているのか実際に潜って撮影しました。崖のように急に深くなっていて、大きな船も座礁することなく進める水路になっていました。巨大なマンタも登場。

──タヒチの島で驚くべき発見があったそうですが？

石渡：はい。実は40年ほど前に篠遠喜彦博士という日本人の考古学者が、タヒチのフアヒネ島で、ポリネシア人の航海技術の高さを知る重要な発見をしました。それが1000年前の巨大カヌーなんです。湿地に埋もれていたために奇跡的に腐らないまま残っていたものです。その船板やマストのサイズから、全長20メートル以上のダブルカヌーだったことがわかりました。デッキに小屋を造り、家畜や食料を積み込んで太平洋を渡ったのです。タヒチの博物館に保管されている発掘されたカヌーの船板を撮影させてもらいました。

タヒチのファヒネ島で、篠遠喜彦博士が発掘した、1000年前のカヌーの船板。全長20メートルほどの大型のカヌーだったと推定されます。２つのカヌーを並べたダブルカヌーで、太平洋に漕ぎ出していったのです。

──最後に、番組を楽しみにしている皆さんに見どころをお願いします。

石渡：大航海時代になってヨーロッパから船がやってくるようになると、やがてキリスト教によってポリネシアの古い信仰は禁じられるようになりました。でも、取材しているときにも聖地タプタプアテアのマラエに祈りを捧げに人々が訪れていました。タヒチでは、今でもポリネシア文化が息づき、タプタプアテアがポリネシア人の心の故郷であることを肌で感じることができました。ハワイ、イースター島、ニュージーランドに広がった、ポリネシア文化圏の原点を、美しい南の島の風景と一緒にお届けします。

美しいサンゴ礁の海も見どころのひとつ。タヒチの豊かな海にはザトウクジラもやってきます。

太平洋4000キロを渡った海の民！ポリネシアン･トライアングル

謎の聖地を生んだ！不思議なサンゴ礁の裂け目

最新の特集特集アーカイブ一覧