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ポーランド、クラクフ第41回世界遺産委員会リポート

7月9日(日) クラフク世界遺産委員会リポート 第八回

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新規登録 歴史都市ヤスド
(イラン)
© ICHHTO

開幕から八日目のポーランド、クラクフでの世界遺産委員会。昨日に引き続き、新しい文化遺産を決める審議が行われました。

まず決まったのが、イランの「歴史都市ヤスド」。シルクロードの交易で発達した街で、砂漠に適した地下水利システムや、伝統的な建築物がよく保存されていることが評価され、世界遺産に登録されました。

続いて、いよいよ日本の沖ノ島の審議が始まりました。日本は当初、8つの構成資産で推薦していたのですが、ICOMOS(国際記念物遺跡会議)の審議前の評価は、「沖ノ島とその周辺の小屋島、御門柱、天狗岩の4つだけを世界遺産に登録すべし」というものでした。これに対し、日本側はあくまでも8つ揃っての世界遺産登録を主張。審議の行方が注目されていました。

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新規登録『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群(福岡県宗像市)
© World Heritage Promotion Committee

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沖ノ島を審議中の世界遺産委員会

委員国のトップを切って、意見を述べたのが韓国。「ICOMOSに賛成。4つの構成資産で登録するのが良いと思います」というものでした。しかし、その後のレバノン以降、委員国20カ国がすべて「8つ揃って世界遺産に登録する方が良い」という意見でした。それを受けて、韓国も「そうした意見を拒否はしません」と表明。

宗像大社沖津宮遥拝所、宗像大社中津宮、宗像大社辺津宮、新原・奴山古墳群も含めた8つの構成資産での世界遺産登録が、決まりました。正式な名称は、「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」。

大逆転での登録に、記者会見した宮田亮平文化庁長官は「うれしさで泣きそう」と本当に涙がにじませていました。

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沖ノ島の登録決定後の記者会見

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涙をにじませる宮田亮平文化庁長官

その後も審議はつづき、さらに9つの文化遺産が新たに決まりました。

「16世紀から17世紀のヴェネツィア共和国防衛施設群:スタート・ダ・テーラ−西スタート・ダ・マール」(イタリア、クロアチア、モンテネグロ)。
「南グリーンランド、氷冠周辺部でのノース人とイヌイットの農業の景観」(デンマーク)。
「タプタプアテア」(フランス)。これはフランス領ポリネシアにある先住民の聖地です。

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新規登録 16世紀から17世紀のヴェネツィア共和国防衛施設群:スタート・ダ・テーラ−西スタート・ダ・マール
(イタリア、クロアチア、モンテネグロ)
© Municipality of Palmanova

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新規登録 南グリーンランド、氷冠周辺部でのノース人とイヌイットの農業の景観
(デンマーク)
© Kenneth Høegh

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新規登録 タプタプアテア
(フランス領ポリネシア)
(デンマーク)
© SCP

「シュヴァーベンジュラの洞窟群と氷河期芸術」(ドイツ)。
「タルノフスキェ・グルィの鉛・銀・亜鉛鉱山とその地下水管理システム」(ポーランド)。
「スヴィヤジスクの島の生神女就寝大聖堂」(ロシア)。

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新規登録 シュヴァーベンジュラの洞窟群と
氷河期芸術
(ドイツ)
© Landesamt für Denkmalpflege (LAD) im Regierungsprä,sidium Stuttgart

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新規登録 タルノフスキェ・グルィの鉛・銀・亜鉛鉱山と
その地下水管理システム
(ポーランド)
© Tarnowskie Góry Land Lovers' Association

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新規登録 スヴィヤジスクの島の
生神女就寝大聖堂
(ロシア)
© Regional Foundation of Revival of Historical and Cultural Monuments of Republic of Tatarstan

「アフロディシアス」(トルコ)。美と愛の女神アフロディーテを祭る神殿があった、保存状態の良い古代ローマの遺跡です。
「イングランドの湖水地方」(イギリス)。
「ヴァロンゴ埠頭の遺構」(ブラジル)。かつてアフリカからの黒人奴隷を受け入れるために作られた港湾施設の遺構です。

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新規登録 アフロディシアス
(トルコ)
© Aphrodisias Project

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新規登録 イングランドの湖水地方
(イギリス)
© Si Homfray

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新規登録 ヴァロンゴ埠頭の遺構
(ブラジル)
© Milton Guran

また、以下の2つの世界遺産が範囲を拡張して登録されました。

「ストラスブール:グラン・ディルからノイシュタットまでのヨーロッパの都市風景」(フランス)
*「ストラスブールのグラン・ディル」の拡張登録。
「ヴァイマル、デッサウおよびベルナウのバウハウスとその関連遺産群」(ドイツ)
*「ヴァイマルとデッサウのバウハウスとその関連遺産群」の拡張登録。

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拡張登録 ストラスブール:グラン・ディルからノイシュタットまでのヨーロッパの都市風景
(フランス)
© A.Capello

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拡張登録 ヴァイマル、デッサウおよびベルナウのバウハウスとその関連遺産群
(ドイツ)
© Tim Schnarr

というわけで、この日、新たに11の世界遺産が決まり、新規登録の審議は終了。
今回の世界遺産委員会を通しては、21(自然遺産3、文化遺産18)が新規登録され、 世界遺産の総数は1073となりました。

プロデューサー 堤