特集

ポーランド、クラクフ第41回世界遺産委員会リポート

7月3日(月) クラフク世界遺産委員会リポート 第二回

始まって二日目のクラクフでの世界遺産委員会ですが、昨年の世界遺産委員会の報告や、今回の議題の採択、スケジュールの確認などが行われ、本格的な審議スタートは明日三日目から。

ということで、クラクフの近郊にあるアウシュヴィッツ収容所へ視察に行きました。世界遺産としての正式名称は「アウシュヴィッツ・ビルケナウ ナチスドイツの強制絶滅収容所(1940−1945)」といいます。

クラクフを車で出て、走ること1時間半。アウシュヴィッツは、のどかな田園の中にありました。この辺りの地名はオシフィエンチムというのですが、第二次世界大戦中は、ポーランドを支配下に置いたナチスドイツが「アウシュヴィッツ」というドイツ語の地名に変更していたのです。元々、鉄道が通っていて囚人の運搬に適していたこと、また都市から離れていて土地があり施設の増設が容易だったことから、この場所が収容所として選ばれたといいます。

photo

田園を車で走ること1時間半

photo

レンガ造りの建物が林立する
アウシュヴィッツ収容所

有名な「働けば自由になれる」というドイツ語の標語がある門をくぐるとレンガ造りの頑丈そうな建物が並んでいます。元々はポーランド軍の施設だったものを利用したとのこと。かつて大量の囚人が押し込められていた建物に、さまざまな展示がされています。

photo

ドイツ語の標語「働けば自由になれる」

photo

囚人のためのトイレ

処刑前後に囚人から刈り取った大量の毛髪、奪い取った靴やブラシなどが各部屋に山積みされています。収容された囚人たちが、生身の人間でありそれぞれの生活があったことが生々しく迫ってきて、これらが死者の尊厳を守るために撮影禁止になっている理由がよく分かりました。

処刑につかわれたガス室、遺体を焼くための焼却炉。言葉や映像ではなく、歴史を語るモノ=物証がたくさん残されていて、直接的なインパクトを見るものに与えてきます。

photo

毒ガスが入っていた容器の山

photo

処刑に使われたガス室

photo

ルドルフ・ヘスが処刑された絞首台

「見るのがしんどくなってくる」
同行した面々が口々にこう言い、私自身も同じ気持ちになりました。

アウシュヴィッツの所長だったルドルフ・ヘスは戦後逮捕され、ここで死刑となります。そのとき使われた絞首台も展示されていました。

アウシュヴィッツから7キロ、バスで5分ほどのところにあるのがビルケナウ収容所。アウシュヴィッツだけでは足らなくなり、急いで作られたのがこちらです。そのため粗末な建物が、広大な敷地に並んでいます。

photo

広大な敷地のビルケナウ収容所

photo

建物はアウシュヴィッツより粗末

photo

戦後作られたモニュメント

戦後作られた慰霊のモニュメントの前で見かけたのは、イスラエルの国旗をもったグループ。家族をここで亡くしたと思われる老人が、仲間に肩を抱かれながら泣いていました。物証と共に、人々の記憶も生々しく残っているのです。

案内してくれたガイドは、
「ビルケナウは元々、建物の造りがよくないので、それをどう保全していくのかが一番の問題です。またアウシュヴィッツでは、人の髪や靴などは劣化が進んでいて、どう残していくのかが課題です」
と語りました。

歴史を語るモノを未来に残し、記憶を伝える・・・こうした世界遺産がもつ意義を、改めて重く感じた次第でした。

プロデューサー 堤