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2017年12月10日 4K特別篇 シャンパーニュ地方の丘陵とメゾンとカーヴ/フランス

広告美術が火付け役!? シャンパンとアール・ヌーヴォー

祝杯と言えばシャンパンと言われるほど、おめでたいお酒として世界中に浸透しています。それは、早い段階から世界に向けてマーケティングを行っていたシャンパンの成果でした。170年前の沈没船の中に、そのヒントがありました。また、シャンパンの商業美術は、19世紀のアール・ヌーヴォーにも多大な影響を与えていました。

──ひょんなことから生まれたシャンパンですが、今では世界中で楽しまれています。それはいつごろからなのでしょうか?

田口:ワインに比べると歴史は非常に浅いのですが、かなり早い段階で世界に輸出されていたことがわかっています。2010年にフィンランド沖のバルト海で、170年前に沈んだ難破船からシャンパンが発見されました。これらはロシアに向けて運ばれる途中だったようです。そのうちの何本かは飲める状態で残っていて、実際に飲んだ人によれば、「今よりも甘かったけれど、ブランドの特徴は生きていた」そうです。

モエ・エ・シャンドンで、シャンパン・タワーを実演してもらいました。色と音をしっかり収録するべく、本気体制で挑んだ撮影結果は、番組でご覧ください。

──19世紀には海外に輸出されていたわけですね。ロシア以外にも輸出されていたのですか?

田口:シャンパンのブランドとして有名な、ヴーヴ・クリコの資料室には、当時の記録があります。それを見ると、何と幕末の日本にも送った記録が残されていました。当時からアジアの小国にまで送り届けられていたわけです。祝福のお酒としてのブランド作りにも成功していました。F1などのレースでの「シャンパン・ファイト」などもそうですし、「シャンパン・タワー」も世界中に広がった祝福の儀式ですね。もともと華やかなイメージで流行ったお酒ですが、そのイメージをうまく利用したのです。また、広告戦略も積極的に打って出ました。

ランスよりも南、エペルネには、各メゾンが建ち並んでいます。また、街の街道や河川は、パリやドイツにもつながっていて、世界中にシャンパンを流通させるには最適の場所でした。

──どのような広告が展開されたのでしょうか?

田口:シャンパンのブランドイメージを定着させるための広告戦略でした。例えば19世紀末、1889年のパリ万国博覧会に向けて、巨大な樽を実際に運ぶというキャンペーンを行い、話題を振りまきました。また、芸術家のアルフォンス・ミュシャを起用したモエ・エ・シャンドンのポスターは、アール・ヌーヴォーを代表する作品として、華やかなヨーロッパ文化の象徴となりました。シャンパンは、広告とアートを結び付けた役割も果たしていたのです。

ポメリーが約100年前に建設した迎賓館。内部は、豪華なアール・ヌーヴォー調にまとめられていました。

──シャンパンの美しいビジュアルやイメージが、商業美術と結びついたのですね。

田口:そうです。有名なメゾンのひとつであるポメリーには約100年前に建造された迎賓館があるので、中を撮影させてもらいました。装飾はすべて豪華なアール・ヌーヴォー調でまとめられていました。アール・ヌーヴォーの開花には商業美術が重要な役割を果たしていて、中でもシャンパンの存在は大きかったのです。

シャンパンの象徴である、黄金に輝く絶妙な色合いと、きめ細かな泡。シャンパン自体の魅力をお伝えするべく、4Kカメラで撮影した映像をお楽しみに。

──ではあらためて、今回のシャンパーニュの見どころをお願いします。

田口:今回のロケでは、有名なトップブランドから、家族経営のところまで、さまざまなシャンパンのメゾンを訪れました。いろいろなブランドがあり、地域やブレンドの違いによって、しっかりとした違いがあることもわかりました。映像では、味と香りは運べませんが、 最新の4K画質で、シャンパーニュが誇るシャンパンの絶妙な色合いときめ細かな泡立ちを撮影してきました。ぜひ、その美しさを堪能してください。