バックナンバー:バース・デイ

BACK NUMBER #638 2018.10.6 O.A.

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日本人初の全米女王 大坂なおみとベイジンコーチの絆
2018年9月、大坂なおみが日本人初のグランドスラムを制覇し、テニス界に新たな歴史が刻まれた。102年もの間、日本人の前に立ちはだかり続けた大きな壁を20歳という若さでぶち破った。180cmの長身から繰り出す最速201キロのサーブ。強靭なフットワークで相手コートに突き刺すフォアハンド。そして、最大の武器と言われるバックハンド。特に重心を落として放つバックハンドは、世界一の破壊力を誇る。瞬く間に世界の頂点に登り詰めた彼女だが、わずか1年前は今の姿など想像も出来ないほど苦しんでいた。ミスをすると一気に崩れてしまう精神面のもろさ。それが致命的な弱点だった。テニスはスポーツの中でも特にメンタルの強さが重要とされている競技。世界を舞台に戦い続けるテニスプレーヤーには、心のコントロールを手助けしてくれるコーチの存在が必要不可欠なのだ。大坂は2017年、その弱点を克服すべく、ドイツ出身のサーシャ・ベイジン(34)と契約。彼はわずか9か月で大坂なおみを全米女王に導いた。大坂の心を読み取り、ポジティブな言葉をかけ続ける。彼の狙いは大坂本来の力を十分に発揮させること。そのために、彼はどんな指導をしたのか?
ベイジンは、15歳の時、事故で父を亡くし、母と2人の妹との4人暮らし。家族の中で唯一の男性になった環境が今のコーチングに大きく影響しているという。幼い頃からトッププロを目指していたベイジンだったが、その夢を叶えることは出来なかった。そこで指導者を目指そうと、トッププロの練習パートナーとして第2の人生を歩むことを決断。2007年、22歳の時に初めて練習パートナーを務めた相手は、当時、4大大会を既に8度制していたセリーナ・ウィリアムズだった。年間300日、朝から晩までセリーナと共に過ごす生活を8年続け、様々な事を学んだ。するとベイジンは、いつしかテニス界でセリーナの秘密兵器とまで呼ばれるようになった。すると、彼の元には、練習パートナーとしてのオファーが殺到。セリーナとの契約が切れた後、他のトッププロと契約したベイジンは、共に世界ランク1位へと導いた。サポートを受けた選手が口を揃えて指摘するのは、ベイジンの人柄。常に穏やかで相手を包み込み、辛坊強く付き合ってくれる。それは、家庭環境から得たベースに加え、最新の心理学から学んだものだという。言葉を大切にし、様々なコミュニケーションの手段を使って選手のモチベーションを高める。これが、ベイジンが指導する上で最も大切にしていることなのだ。
プロデビューから順調に世界ランクを上げていき、若手選手として大いに期待されていた大坂なおみ。しかし、格下相手に自滅し、負けてしまう試合も珍しくなかった。ベイジンの前に大坂についていたテイラーコーチは、プロとしての責任がいかなるものか、プレー1つ1つを厳しく指導し、世界のトップになる基礎は彼によって培われたと評価されている。しかしベイジンは、その基礎の重要性を理解した上で、さらに大坂を開花させるには、意識改革が必要だと考えた。そこでまず始めたのは、普段の生活からテニスを連想させることを極力遠ざけること。日常生活での心の安定がプレーに影響する。それがベイジンが狙う意識改革の重要なポイントだった。さらに、ゲームで遊んだり、ダンスをしたりと共通の話題を見つけ、大坂との会話の量を意識的に増やした。そして、練習でも細かい気配り、高いモチベーションを維持することを忘れない。きついトレーニングは、一緒に汗を流し、気持ちが切れないよう心掛けた。そして、彼の真骨頂と言われているのが選手の不安を取り除くこと。ミスをすると自分を責めてしまう大坂に、戦術や技術的なことはほとんど言わず、優しく、前向きな言葉をかけ続ける。そんな言葉の1つ1つが大坂の心を安定させていった。すると、就任から3か月後、大坂は強豪選手を次々と敗り、ツアー初優勝。さらに日本人初の全米OP優勝を果たした。この変化は誰よりも大坂自身がはっきりと感じている。
大坂なおみとベイジンコーチ。どんな苦難にもひるまない強いメンタルをどう育てるのか?今、スポーツ界を揺るがす課題への1つの答えがここにある。
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