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BACK NUMBER #635 2018.9.15 O.A.

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夢の4階級制覇へ 井岡一翔 復帰戦の舞台裏に密着
紛れも無く、井岡一翔は日本ボクシング界、軽量級の絶対王者だった。その井岡が2017年大晦日、突然の引退発表。100年に一人の逸材と言われ、3階級制覇を成し遂げた男の決断だった。それは国内で防衛戦を重ねるたびに増え続けた『強い相手を避けている』とのバッシングの中での発表だった。
井岡はアマチュア時代から日本ボクシング界で注目を集めていた。プロ転向後、当時の日本最速記録で世界チャンピオンに登り詰めた。その後も様々な記録を作り、見事に3階級制覇を達成。ファンからの賞賛を浴びながら戦いを続ける中で、井岡の心の片隅に戸惑いがあった。ボクシング界には、WBA・WBC・IBF・WBOの主要4団体がある。さらに、その団体の各階級に正規王者・スーパー王者・暫定王者など幾人もの世界王者が乱立。日本人だけでも10人以上の世界王者が存在していた。“唯一無二”という言葉を信条に戦ってきた井岡に、新たなモジベーションを見出すことが段々に難しくなっていった。
世界のボクシング界では、ある動きが起きていた。『スーパースター同士の対決が観たい』『最強の王者を決める戦いを観たい』そんなファンの声に押され、アメリカでは各団体の垣根を越えるビッグマッチが行われるようになっていた。井岡もそんな戦いを目の当たりにし、自身の中にあったボクシングへの思いに火が点いた。すると、引退発表から2か月、世界軽量級のスターが激突する大会での現役復帰を決意。この大会に参戦するためには、これまでのフライ級から1つ上のスーパーフライ級に階級を上げなければならない。わずか1キロ違うだけで、パンチ力に格段の差が生まれる。井岡にとって4つ目の階級となるスーパーフライ級はまさに未知の領域だった。
練習拠点をアメリカに移した井岡が、まず取り組んだのは肉体改造。アメリカで勝つためには、パンチ力が格段に増す相手の攻撃に耐え、一撃で相手を仕留めるための筋力を身に着けなければならない。さらに、目の肥えたアメリカのファンの支持を集めるためには、これまでアウトボクシングから、アグレッシブにKOを奪いにいく超攻撃的なスタイルへとシフトチェンジする必要がある。事実、今回の井岡の復帰戦は、前座の前座。この評価を自力で覆さなければならなかった。これまでと違うスタイルを体にしみ込ませ復帰戦に全てをぶつける。
2018年9月9日(日本時間)、ついにその時が訪れた。相手はアマチュア時代に世界選手権で金メダルを獲得したプエルトリコの英雄・アローヨ。初めてづくしの壮絶な戦いとなった。1Rから積極的に攻め続けた井岡は、3R、大きなチャンスが訪れる。強烈なパンチがアローヨの顔面を捕らえ、ダウン。これまでの井岡ならば、これ以上無理に攻めない場面だが、この日は違っていた。試合は一進一退の攻防。最終ラウンドまでもつれこんだ。勝敗は判定へ。結果は3−0で井岡の圧勝。しかし、井岡の顔は今までにないほど腫れあがっていた。この勝利で井岡は、次の試合、世界スーパーフライ級タイトルに挑戦する可能性も浮上。日本人初の4階級世界王者に手が届くところまで大きく前進した。
唯一無二の存在となるために海を渡った井岡一翔(29)。ボクシングの本場・アメリカで再び世界王者に登り詰めるその日を心待ちにしている。
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