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BACK NUMBER #620 2018.5.26 O.A.

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日本陸上界の新時代・ライバルたちが繰り広げる熾烈な戦い
2017年9月、日本の陸上短距離界の悲願であった大記録が誕生した。桐生祥秀がマークした100m、9秒98。日本人選手として、初めて10秒という大きな壁を破ったものだ。その快挙はスポーツ紙はもちろん、一般紙の一面を飾り、その年の流行語大賞・特別賞を受賞するなどスポーツ界のスパースターが誕生した瞬間だった。その一方で悔しさを滲ませる男たちがいる。初の9秒台を争っていたライバルたちだ。

桐生の快挙に、最も悔しい思いを抱いていた男・山縣亮太(25)。桐生が現れるまで、山縣はロンドン五輪で日本人オリンピックレコードを記録するなどエースだった。しかし2013年、高校生だった桐生が日本歴代2位の10秒01を記録。以来、山縣はライバル心をことある毎に口にした。2016年には、直接対決で桐生を破り自己ベストを更新。山縣はこの年、1年間で実に自己ベストを3度も更新する飛躍を見せた。しかしその翌年の2017年、アクシデントに見舞われる。シーズン開幕戦で右足首を故障し、3か月間戦線を離脱。世界陸上代表の座がかかった日本選手権で、桐生に勝つどころか、6位に沈んだ。このままでは終われない。山縣は強い思いを胸にあることに徹底的に取り組んだ。それはレース後半の加速。山縣の本来の武器はスタートダッシュ。これまで磨き上げてきたその技術は、今では世界のトップレベルと言われるまでになっている。9秒台を出すには、いかにして中盤以降のタイムを縮められるかがカギ。山縣はレース後半の伸びを生むスタミナをつけるため、100mよりも長い距離を徹底的に走り込んだ。そんな山縣の取り組みは徐々に実を結び始め、2017年9月に行われた実業団の全国大会で後半グイグイと加速。そして9秒台まであと1/100に迫る10秒00を記録。自己ベストを更新した。日本人初の9秒台は逃したが、自分が桐生の記録を塗り替える。その思いが山縣を突き動かしている。

桐生が日本人初9秒台の快挙を達成したその日、同じレースを走っていた関西学院大学・多田修平(21)。3か月前には世界陸上・100mの日本代表として世界と戦ったニューヒーローだ。さらにリレーメンバーとして、桐生らと共に日本初のメダル獲得にも貢献。あのレースでもスタート前は、桐生と並ぶ優勝候補として注目を集めていた。スタートでリードしたのは多田だったが、後半、桐生が驚異の加速。目の前でその快挙を見せつけられた。実はこの日、多田は自己ベストを更新していていた。打倒・桐生への思いは募るばかりだ。

打倒・桐生に燃える男がもう1人いる。ケンブリッジ飛鳥(24)。2017年からアメリカへの遠征を繰り返し、実戦でレベルアップを図ってきた。昨年、彼も日本選手権で自己ベストを更新している。
そして2018年5月20日、今シーズンの幕開けともいえる国際大会・セイコーグランプリが開かれた。打倒・桐生に燃える男たちが一同に顔をそろえた。果たして桐生を破るものが出るのか。このハイレベルの戦いを見届けようと、1万7千人の観客が詰め掛けた。世界陸上の覇者ガトリンを加えた混戦のレース。日本人トップとなったのは最年長の山縣だった。一方、敗れた桐生は4位となった。
長らく立ちはだかった9秒台の壁。それが突き破られた今、次に目指すのは誰が新たに記録を塗り替えるか。ライバルたちがしのぎを削る熾烈な争いは終わらない。
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