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BACK NUMBER #605 2018.2.3 O.A.

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「ハンカチ世代」最強左腕と呼ばれた男の苦悩…
2018年、30歳を迎えるハンカチ世代。斎藤・田中を始め96人がプロ入りしたが、去年8人がクビになったことで既に半分以上がプロ野球を去っている。この男も、2017年に戦力外通告を受けたハンカチ世代の1人。黄金世代に揉まれ、戦ってきた男のプライド。ハンカチ世代最強左腕と呼ばれた男の崖っぷちを追った。
その世代を代表する選手といえば、名門ヤンキースで活躍する田中将大、ドジャースの優勝に貢献した、前田健太。2人は、日本人ピッチャーのレベルの高さを野球の本場で見せつけている。日本でも多くのスター選手を輩出。今の野球界は「ハンカチ世代」と呼ばれる彼らが支えていると言っても過言ではない。しかし、厳しい現実もある。現在、現役は45人。30歳を迎える前に既に半数以上がプロ野球界を去り、現役の方が少ないのだ。そんな「ハンカチ世代」の1人。元巨人軍投手・乾真大(29)。乾は、甲子園で活躍、田中将大や斎藤佑樹と共に日本代表に選ばれ、有望株が揃う、この世代のトップを走り続けてきた。しかし2017年10月戦力外通告。乾の野球人生は未来を閉ざされた。乾の野球人生は、底辺から始まった。小学生時代は補欠、中学でも市の大会で勝ったことがなかった。そんな乾が大胆にも高校野球の名門・東洋大姫路に進学。一般受験での合格だったが、当然同級生たちは、スポーツ推薦で入学した野球エリートばかり。入部早々、身の程知らずを思い知らされたという。それでも諦めなかった。全身に20キロの重りを付け走り込むなど、同級生の誰より遅くまで練習した。そんな努力を積み重ね、ストレートの球速は135キロに進化。エースの座を勝ち取り、3年生でチームを悲願の甲子園へ導いた。そして乾の好投で、2回戦3回戦と勝ち上がり、東洋大姫路はベスト8に進出。準々決勝の相手は、あの田中将大率いる駒大苫小牧。夏3連覇を狙う絶対的優勝候補だったが、この大会屈指の激闘となった。しかし乾は田中に勝つことは出来なかった。その後、斎藤佑樹、田中将大と共に高校日本代表に選ばれた。しかし、後に6人がプロ入りするハイレベルな同級生たちに乾は圧倒された。同級生に追いつきたい。そんな思いを胸に、4年後を期して東洋大学に進学。そして、必殺の武器に磨きをかける。縦に鋭く落ちるスライダー。大学日本代表でアメリカの強打者から、面白いように空振りを奪い一躍その名を上げた。更に2009年に行われたプロ野球の若手選抜との試合では、後にホームラン王になるT岡田から空振り三振を奪う。自信をつけた乾は、2010年、北海道日本ハムに入団。同じチームのドラフト1位は、同級生をリードしてきた斎藤佑樹。斎藤と共に、「ハンカチ世代」を代表する期待のサウスポーとしてクローズアップされた。この時22歳。高校から先にプロ入りした同級生には、既にチームの主力としてバリバリ活躍していた選手もいた。それは乾にとって何よりの刺激だった。2年目にはリリーフとして36試合に登板。初ホールドもあげたが、大きな課題も浮き彫りになった。好不調の波が激しく、コントロールを突然乱してしまう。そんな不安定さを克服出来ないまま、プロ生活5年が過ぎた。この頃になると、高校時代、甲子園に出られなかった同級生たちが次々台頭。プロで結果を残すようになった。そんな中、乾は、プロ6年目の2016年、巨人にトレード。しかし、新天地で力を出すことは出来ず、2017年10月、29歳で戦力外通告を受けた。それは、きら星のごとき黄金世代にもまれ、常に努力で乗り越えてきた乾にとって最大の試練だった。乾は12球団合同トライアウトに向け練習を始めた。この試練もきっと乗り越えられる。そう信じ、1か月間ただひたすら投げ込んだ。トライアウトを1週間後に控えたある日。乾は「ハンカチ世代」の或る男と会っていた。高校・大学の7年間、チームメイトだった林崎遼。甲子園で田中将大から先制のツーランホームランを放ったあの3番バッターだ。久々の再会。話題は、同じ「ハンカチ世代」のことに。乾と同時に戦力外通告を受けた「ハンカチ世代」は8人。プロ野球界の同級生は、現役より辞めた者の方が多くなった。林崎も3年前に戦力外通告を受け、今は西武の先輩・GG佐藤の父が経営する土地測量の会社で働いている。
2017年11月15日。51人の元プロ野球選手が再起をかけた12球団合同トライアウト、そのマウンドに「ハンカチ世代」の乾が上がった。

<乾真大 トライアウト結果>
三振/ヒット/三振/三振

打者4人から3三振。いずれも空振りで奪う好投だった。帰りの車中、携帯電話をチェックしていると乾のピッチングを高く評価するメジャーリーグのスカウトの記事が。左投手の147キロは魅力。獲得に動く球団があるだろう。これを見た乾は期待を胸にいつでも連絡が来てもいいようジャイアンツ球場で練習を再開した。すると、トライアウトでの好投を聞きつけた、かつての仲間が声をかけてきた。しかし、3日経ってもプロ球団からの連絡はなかった。そして、事態は何も動かないまま連絡期限の1週間が過ぎようとしていた。迎えた期限最終日。部屋の整理を始めたその時、電話が。オファーしてきたのは富山サンダーバーズ。来シーズンから、かつてヤクルトで活躍した乾と同じスライダーが武器の伊藤智仁が監督を務める。結局12球団から連絡はなく、乾は富山への入団を決めた。独立リーグで腕を磨き、プロ野球復帰を目指す。
今年30歳を迎える「ハンカチ世代」。激烈な競争を戦った男が、再び壁を乗り越える瞬間を待っている。
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