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BACK NUMBER #602 2018.1.13 O.A.

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緊急特別企画 追悼…星野仙一さん
2017年10月25日。この日はドラフト会議前日。近日放送予定の楽天スカウト陣の密着取材で、ドラフト直前の戦略会議を特別な許可を得て撮影していた。午前11時。各地域の担当スカウトらが顔を揃える中、現れたのは星野仙一。この日は、スカウトたちがリストアップしたドラフト候補の情報をもとに、球団副会長、チーム編成のトップとして、決断を下す。この時、すい臓がんが見つかってから、既に1年3か月。しかし星野は、闘病中であることをごく一部にしか知らせていなかった。梨田監督をはじめ、この場にいた者のほとんどは知らされておらず、撮影スタッフも全く気づかなかった。会議は翌日のドラフト本番直前にも行われた。がんの末期であるにも関わらず、星野は2日間、延べ7時間以上に渡る会議で、熱い議論を交わしていた。そして迎えたドラフト会議。そこでも星野は、いつもと変わらぬ堂々とした姿を見せた。予想通り、1位指名に早実の清宮幸太郎の名が続く中、楽天も清宮を1位指名。「ケンカせずに、逃げるのはダメだ!」星野の主張が、この指名を決定させた。しかし、清宮獲得ならず。星野の顔に苦笑いがこぼれた。次に1位指名したのは、これも星野が高く評価した高校生スラッガーだった。だが、またしても獲得できず悔しさを隠しきれない。楽天が1位で獲得したのは、星野の故郷、岡山の大学生ピッチャー。即戦力が期待される。その後、星野は1時間、ドラフト指名に立ちあった。全体会議終了から3時間後の午後10時、星野は我々のインタビューに答えてくれた。その姿に死が迫っていた事など、微塵も感じられなかった。命燃え尽きる間際まで、野球へ情熱を燃やし続けた男。そんな星野が阪神の監督就任直後、すさまじい勝利への執念を見せていた。
「闘将」誰もがこの男をそう呼ぶ。その闘志で、低迷するチームの指揮官を引き受け、いずれも優勝に導くという輝かしい実績を積み上げた。2013年には、楽天で悲願の日本一を達成。星野はプロ野球史にその名を刻む名将となった。相手が強ければ強いほど燃える男。これこそが星野の野球人生だった。そんな男の真骨頂が如実に現れたのが、阪神の監督時代。我々は当時、密着取材を敢行していた。2002年就任直後、初めてのキャンプ。当時阪神は4年連続最下位。最悪とも呼ばれた暗黒時代の真っ只中。その阪神の監督をOBでもない星野が受けたことに世間は驚いた。だがそこには、弱者を強者にするという思いがあった。言葉でいうのは簡単だが、星野が引き受けた阪神の現実は、生半可なものではなかった。まずキャンプで取り組んだのは、意外なほど基本的な声出し。選手全員にひたすら大声を出させる。更にオープン戦では、徹底して勝ちにこだわった。チームに染みついた負け癖を断ち切る。そんな星野の戦いに迫るべく、我々はオープン戦の最中、星野に小型マイクを着けてもらい、ベンチでの肉声を拾った。星野はミーティングを好まない。気づいたことはその場で伝える。積極的なプレーで起きたミスは責めないが、気の抜けたミスには容赦ない。弱者を強者にする。そこに難しい理屈はいらないと星野は言う。そしてその成果を早くも就任2年目で実らせた。2003年9月15日。本拠地甲子園で迎えたリーグ優勝の懸かった大一番。9回裏、サヨナラのチャンス。星野は、バッター赤星を呼び止めこう言った。
「こんなに、たくさんのお客さんの前で幸せだろ。お前で決めてこい!」
そして、星野がチームに植えつけた勝利への執念がついに実を結ぶ。そして18年ぶりのリーグ制覇。星野はわずか2年でダメ虎と呼ばれた阪神を優勝に導いた。その手腕は、楽天でも発揮された。2013年、監督就任3年目のことだった。監督生活16年目で初の日本一。星野が東北の空に舞った。
星野が、がん宣告を受けたのは2016年7月。すい臓がん。余命90日との診断だった。しかし星野は、その事実を公表しないまま職務を続けていた。星野が公の場で見せた最後の姿が自らの野球殿堂入りを祝うパーティーだった。2017年11月28日に行われたこの時、星野の病を知る者はほとんどいない。亡くなるわずか1か月前のこの姿に、彼の死を予感した者などいただろうか?大学時代からの盟友たちも、何も知らされていなかった。そして死を覚悟していた男の最期の言葉。それは野球界の「未来への夢」だった。この時から1か月後。2018年1月4日午前5時25分。 星野仙一は旅立った。享年70。決して弱みを見せなかった男が公の場で最後に語ったのは野球へのあふれる愛だった。
星野仙一。野球に全てを捧げた人生を私たちは忘れない。
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