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インタビュー

『被取締役 新入社員』の原作者・安藤祐介さんと松原プロデューサーと羽ヶ口信男を演じる森山未來さんの豪華3Sインタビューが実現!【1】

左:松原プロデューサー/中:安藤祐介さん/右:森山未來さん



Q 『被取締役 新入社員』が生まれた背景について

松原P:

「ドラマ原作大賞」に応募したきっかけは何ですか?


安藤:

大学を卒業してから、あらゆる仕事を転々としました。信男のように、ダンボール組み立てのアルバイトをしたこともあるんですよ。転職したことで仕事が落ち着いて、そんな時に「ドラマ原作大賞」のHPを目にして、書いてみようと思いました。テーマは「逆転」。勝ち組、負け組、みたいに勝ち負けハッキリつけられている昨今、ダメなエピソードやドジをやった自分の経験など文章にし、ダメなヤツが大活躍するストーリーも楽しいんじゃないかと。


森山:

勝ち組、負け組を意識するのはどんなときですか?

安藤:

なんか、この言葉を聞く度に心に引っかかって、意識します。違和感という形で。お金とか、仕事の内容とかある一定の線引きで人生の勝ち負けを勝手に決めてしまうというのは、短絡的でちょっと違うんじゃないかと。





Q 原作本とドラマの違い

松原P:

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原作では、安藤さんの頭の中の信男は、強い口調、開き直った口調で独白してますが、イメージしていた彼の外見や他人としゃべる様子は、実際のキャストやドラマ台本と比べてどうでしたか?


安藤:

信男の外見と内面のギャップにはすごく悩みました。独白調でいこうと決めたんですが、書いているうちに「なんかコイツ、ダメ人間なのに賢いこと言ってるなぁ」と。1本筋を通すために、ダメすぎて普通の人たちを観察することに徹した人間、斜に構えて「こいつらカタカナ言葉使ってらあ」って、そういう目で見る人間にしたらいいかと。それさえ成り立てば、原作とドラマで外見などのイメージが違うのは当たり前ですから。この間、台本の読み合わせを聞いて感じたのは、活字であるか映像であるかという、根本的な違いですね。活字で詳しく書いていることが、例えば一行のト書でイメージできたり、つらつらと信男の独白で心理描写しているものが、誰か一人の登場人物のちょっとした変化でわかるとか、映像だと一瞬で表せてしまうんですね。


森山:

採用試験で玉ねぎのみじん切りをするシーンがありますが、実際に演じてみると、活字で書いてあったように1分も動かないって、大変なことなんですよ。周りの人間を、「こいつへたくそ」「あいつはうまい!」って観察しちゃってて動けないんでしょうね。信男には、何か変なプライドがあるんですよね。彼の中で漠然と、「オレだったらこうする」みたいなことを考えているうちに時間が経って、ようやく行動に出たら、ぐちゃぐちゃになっちゃう。


松原P:

未來くんが言うようなことが、まさに原作とドラマの違いですね。原作の中にあるセリフや描写を人間が演じるという、たったそれだけのことを成立させないと、ドラマにならないんですよ。当たり前に聞こえるけど、生身の人間が演じるということが違う。生身の人間の面白さ、豊かさが表現できる部分を原作の中から抽出して、最後に信男が皆に何かを残し、観た人の心を揺さぶる、そういうドラマにしたいと思いました。


森山:

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原作の信男は物事をフラットに見てるんですよね。その中で、どこか屈折しているというか、下の人間は卑下するし、上の人間には認められないから、なじめないし孤独だし。ドラマの信男は、それに加えて、どこか「求められたい!」「変わりたい!」という意識が強いと思います。社会から逸脱しているにもかかわらず、採用試験を受けに来ているのはそういうことじゃないかと。逸脱しているなら秋葉原に行けばいいんじゃないかと思って…


安藤:

そうですね!それは気づかなかった。


森山:

秋葉原に行けば信男に近い人に遭遇できるかもしれないと、役作りのつもりで行ってみましたが、彼らは「社会」という枠とは別のコミュニティーを創って、その中でそれぞれに世界観を作れている人たちだと感じました。信男は、その中にも入っていけない人じゃないかと。