コラム|TBSヴィンテージクラシックス:TBSテレビ

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日本最古のテレビ映画『ぽんぽこ物語 』修復版 Paravi(パラビ)初配信記念コラム(2)2022.2.7

テレビ・アナリスト 吉田正和

■私感2【修復】
映画をテレビで放送する場合、昔は実際にフィルムを映写し、それをテレビカメラで撮影し放送していた。なのでフィルムが切れたりして放送が途切れたりすることもあった。その後、それを録画して放送するようになる。これらは映画館と同じくスクリーンに映しだされた映像を放送している。

時代が進み、「テレシネ」と呼ばれるフィルムをビデオに録画する技術が生まれる。基本的には放送と同じく映写したものをビデオ録画するのだが、古いフィルムになってくると劣化によって傷があったり映像がブレたりする。これらをテレシネ後に修正して放送やDVDにしている。最新のテレシネはフィルム全体をスキャニングしてしまうので、映像のブレはほぼなくなっている。傷も前後のコマからAIが判断して補完する技術が進んだので、かなり綺麗なものになっている。

しかし古い作品はAIの判断を大きく逸脱する傷やブレが起きるので手作業で修復していくことになる。一コマ一コマ目視し、人の手によって細かく修正されていく。今回の「Paravi」版はDVDで修正されたマスターをさらに手作業で追加修正された新マスターになっている。

フィルム自体を見たことがある人は思った以上に小さいことに気が付くだろう。映画館のスクリーンに映し出される映像の元素材としてフィルムは決して大きなものではない。そのため元素材を保存し、上映用には複製されたフィルムを使用する。劣化してくると破棄され、新しく複製される。この「ニュープリント」と呼ばれるフィルムは劣化した時間を巻き戻す。

現在、民生テレビは60インチ以上にもなっている。映画館ほどの大きさではないまでも素材の劣化は見やすさに大きく影響する。ごくわずかのブレが大きな違和感となって、物語の感動を邪魔してくる。監督はフィルムが劣化することを想定してはいないし、こんな大きなテレビが出てくることも想定していない。

監督の意図することを純粋に楽しむには徹底した修復が必要なのだ。


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(60年振りの「感激の対面」。発見されたフィルム原盤を手にする。
子役、小鳩くるみは英米児童文学者、鷲津名都江となっていた。)


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(長い年月によってフィルムには少なからぬ損傷・・かび、きず、ゆがみ、付着・・があった。)


■私感3【影絵】 につづく

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