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手作りフリップ

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10月26日放送

新政権で物価高は収まる? 「責任ある積極財政」は難しいバランス感覚に 国債発行で円安→物価高の悪循環も…

高市氏が自民党総裁選に勝利して以降、市場では“株高”と“円安”が同時に進行する「高市トレード」とも呼ばれる現象が起きています。株価が3500円以上高くなった一方、円は5円以上安く...一体何が起きているのでしょうか。

■高市氏「国債の発行もやむを得ない」発言で円安に影響か

日銀の理事を務めた早川英男さんによりますと、「高市氏の『国が呼び水的な投資をする』という発言などを受けて、政府が積極的にお金を使うことで景気が良くなるのではという期待が膨らみ株価が上昇した」ということです。

一方で、そうした出費の財源について高市氏は、「国債の発行もやむを得ない」と発言するなどしているため、“国の借金が増えるかもしれない”と受け止められたことなどから円安が進みました。また、高市氏が過去には円高につながる日銀の利上げに否定的な姿勢を示していたことも円安を後押ししているといいます。

そして、円安が進めば輸出関連企業にはプラスに働くので、株価を一層押し上げる要素にもなっています。

例えば、日本で300万円する車をアメリカに輸出する際、1ドル100円なら3万ドルですが、円安が進んで1ドル150円になれば2万ドルとなり、アメリカで買う人にとっては割安になるので、日本車が売れやすくなります。そのため円安は、少なくとも短期的には輸出企業に有利に働くと期待されています。

しかし、これが日本国内への輸入となると、円安は物価高に直結します。例えば1個1ドルのオレンジを日本に輸入した場合、1ドル100円の時は100円ですが、円安で1ドル150円になれば、そのまま150円に値上がりします。

■株価上昇も生活は苦しく

日本は、多くの食料品や燃料、資材などを海外からの輸入に頼っているので、円安によってあらゆるものの値段が高くなっています。

実際、円安が続く中での日本の物価上昇は、賃上げが追いつかないスピードで進んでいるため、物価の変動を考慮した実質賃金指数(厚労省・毎日勤労統計調査)で見ると、購買力は5年前と比べ2割近く減っていて、株価が上がったところで生活は苦しくなっている人が多いのが現状です。

そして皮肉なことに、海外から見ると円安になれば日本は割安になるので、外国人観光客が増えていきます。それによって、外国人に人気の国内の観光地などではホテル代が高騰し、外食の単価も外国人に合わせてつり上がっていきます。

一般の日本人には手の届きにくい1億円超えのマンションなども、外国人から見れば円安によって割安なので、投資目的で購入され、さらなる高騰を招くことにもつながります。

■「責任ある積極財政」“国債頼み”なら物価高加速…?

こうした状況での物価高対策は、財源をめぐって難しい判断を迫られます。早川さんは、「『積極財政』として、政府が使うお金の財源を国債に頼ることになれば、国の借金が膨らんで円の信用が落ち、さらなる円安を招きます。それによってさらに物価高が加速するという悪循環に陥る可能性がある」といいます。

高市氏は自身が掲げる「責任ある積極財政」について、「税率は上げず、債務残高の伸び率を成長率の範囲内に抑えることで、市場の信認を得る」と説明していますが、市場の受け止め方次第では、円安を招き物価高を加速させかねないため、難しいバランス取りが求められます。

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