世界に波紋を広げる政策を、次々に打ち出すトランプ大統領。こうした中、物議を醸しているのが、イーロン・マスク氏が率いるDOGE=政府効率化省です。
■DOGE=政府効率化省とは 機密情報流出の懸念も
物議を醸しているのが、イーロン・マスク氏が率いるDOGE=政府効率化省です。 これは国務省や国防総省のような省庁とは異なり、ホワイトハウス内の大統領直轄の組織として位置づけられています。
しかし、どこにオフィスがあるのか、誰が所属しているのか、どんな権限を持っているのか、多くのことがベールに包まれているのです。
「オフィスはホワイトハウスに隣接するビルにある」(Bloombergより)とか、「スタッフの多くはマスク氏とビジネスで接点がある若いエンジニアである」(米NPRより)などと報道されている程度。
ちなみにトランプ氏はスタッフについて、「IQが非常に高い100人の男性がいる」などと発信していますが、どのように採用され、どんな仕事をしているのかも分かりません。
一方で、こうした状況にもかかわらず、DOGEのスタッフが、特定の政府職員のみに許されていた「財務省の決済データ」にアクセスしていたことも明らかになり、機密情報の流出が懸念されています。
■DOGEのミッションは政府組織の「ムダ削減」 USAIDを閉鎖へ
DOGEのミッションとされるのが政府組織の「ムダ削減」です。
大統領選挙期間中、イーロン・マスク氏は「政府予算を2兆ドル(約300兆円)削減する」などと豪語していました。
政権発足後、約230万人いるとされる連邦政府職員に早期退職を募るメールを送り、人員削減に向けて動き出しています。
そして、トランプ氏が出した大統領令を元に、今回マスク氏が打ち出したのがUSAID(アメリカ国際開発局)の閉鎖です。
USAIDは1961年に設立され、世界中の紛争地域や貧困地域で、食糧や医療支援を行ってきました。
最近では、ロシアの侵攻を受けるウクライナや、内戦が泥沼化しているアフリカのスーダン、治安悪化による人道危機でアメリカへの難民が押し寄せている中南米ハイチなどで支援活動を行っていました。
USAIDの年間支出は、世界各地での紛争の広がりなどを受けて右肩上がりに増えていて、日本円にして約6.5兆円にのぼります。
こうした人道支援をやめた場合どうなるのか。 アメリカ政治に詳しい明海大学小谷哲男教授は「医療や教育支援が行き届かない地域が増えると、テロリストの温床となり、対アメリカのテロの危険性が高まる。アメリカが支援をやめた地域では中国・ロシアの影響力が増す」と指摘しています。
世界各地で様々な役割を果たしているUSAIDを、なぜ閉鎖させるのでしょうか。
■背景には「陰謀論」国際社会に影響?
背景にあるのが、トランプ支持者の間に広がる「陰謀論」です。
「正式な政府とは別に、リベラル派が牛耳る闇の政府=『ディープステート』が官僚機構を操っている」などという考え方です。
明海大学小谷哲男教授は「トランプ支持者には、『ディープステートが政府予算を無駄遣いして私腹を肥やしている』などと考える人も多く、その大本がUSAIDだとされている」といいます。
トランプ氏も大統領選で「ディープステートの解体」をアピールしていて、「(USAIDの)腐敗はこれまでに見たことのないレベルだ」などとXに投稿。
マスク氏も「犯罪組織でただちに無くすべき」などと投稿していました。
それぞれ億単位のフォロワーを持つ2人の影響力は大きく、こうした投稿が一気に拡散する中で、USAIDの閉鎖という極端な政策も、一定の支持を集めているのです。
超大国アメリカが世界で行ってきた人道支援は、このまま打ち切られるのか。国際社会への影響が懸念されています。
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