日本銀行は10年以上続いた「異次元の金融緩和」に終止符を打ちました。アベノミクスの要だったこの“異次元緩和”は何をもたらしたのでしょうか。長期化による副作用とは?日銀・植田総裁が「当面残る」としたその「遺産」、大量に買い入れてきた国債やETFはどうなるのか?手作り解説でお伝えします。
■大胆な金融緩和とは…
日銀本店を上から見ると『円』に見えますが、その『円』の価値を守る役割から、「通貨の番人」とも呼ばれる日本銀行。今回、アベノミクスを支えた『異次元の金融緩和策』の転換に踏み切りました。
黒田前総裁が『市場に流すお金の量を「2倍にする」と宣言』し打ち出した、「異次元緩和策」は、「黒田バズーカ」とも表現されました。マイナス金利のほか、巨額の国債を購入し、「ETF=上場投資信託」についても、買い入れを進めてきました。
「ETF」と投資信託の一種で、これを大量購入したことによって実質的に株価を下支えすることになり、「禁じ手」との批判も付きまといました。
■効果は?
こうした極端で異例の政策によって世の中に出回るお金を増やすことで、消費を拡大させる、そうすれば物価が上昇し、企業の収益が増える。
そして、働く人の賃上げにつなげる、そんな好循環が生まれるという期待があったわけですが、実際の効果はどうだったのでしょうか。
岸田総理は2023年「30年間、想定されたトリクルダウンは起きなかった」と発言。
本来であれば、経済的な利益が一般市民のところまで滴り落ちるはずでしたが…実際は、株高などで富裕層の利益が増えたり、大企業の業績が上がったりする一方で、多くの人が恩恵を実感できる経済状況にはならなかったのです。
■今後の課題は…
一方、「異次元緩和策」による副作用の方が目立ってきました。
経済評論家の加谷珪一さんは、最も懸念されるものとして「物価高=制御できないインフレ」と「過剰な円安」を挙げています。
加谷さんは、今回の政策転換で、この「制御できないインフレ」については、「回避できるギリギリのタイミングだった」と指摘。
賃上げが追いつかない物価高が続く懸念は依然、大きいといいます。
また「円安」は、今回の日銀の政策転換後でも歯止めがかかるどころか、一時、1ドル=151円台までさらに円安が進む事態となりましたが…背景にあるのは、日銀に残った、異次元緩和の負の遺産ともいえるもの…大量の国債です。
日銀は、実に581兆円分(2023年12月末時点)を保有しているのです。
加谷さんは、「今後、国債の価値が下がって政府の利払いが膨れあがらないよう、日銀は当面、買い入れを続けざるを得ない」「それを見透かされて円安が続いている」と指摘。
同様に、ETF=上場投資信託は時価にして71兆円分あり、その扱いも慎重な対応を迫られます。
株価が下がらないように売却するには230年近くかかるとも言われ、金融を正常化させるまでには、まだまだ長く険しい道のりが続きそうです。
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