3月16日に開業した北陸新幹線の金沢~敦賀間。構想から半世紀あまり、初めて北陸3県が新幹線で結ばれました。東京~金沢開業時に、「金沢独り勝ち」ともいわれた経済効果の波及を福井県も期待します。一方、今後、敦賀からさらに大阪まで伸ばす計画ですが、その「費用対効果」はどうなっているのか、などをお伝えします。
東京から3時間強で敦賀まで…
途中停車駅は石川県の加賀温泉、福井県の芦原(あわら)温泉、福井などです。東京から乗り換えなしで敦賀まで行けることになり、乗車時間がおよそ50分短縮されます。新幹線が通っていなかった福井県にとっては悲願の開通になります。
歴史と文化の交差点「鯖街道」
福井県は、断崖絶壁の奇景・東尋坊や、越前ガニ、曹洞宗の大本山「永平寺」が有名で、米ワシントン・ポスト紙の「今年旅するべき世界の12の穴場スポット」の一つにも選ばれています。福井の若狭湾地域は、戦国時代ごろから、若狭湾で採れた海産物を、行商人が京都まで運ぶ拠点として栄えました。海産物のうち最も多かったのが「サバ」だったため「鯖街道」と呼ばれます。京都との文化の交差点だった福井ですが、北陸新幹線も今後、敦賀から京都を通って新大阪まで伸ばす計画です。
地域経済の”起爆剤”に…
かつては日本海の玄関口とまで呼ばれた福井県ですが、1999年の83万人をピークに人口減少が続いています。2015年に北陸新幹線の東京~金沢間が開通したときは、金沢の観光客が2割も増加したことから、首都圏とダイレクトに繋がることによる地域活性化を期待していて、年間約309億円の経済効果が見込まれています。
延伸計画の費用対効果は?
ただ、気になるのが費用対効果です。今後、 敦賀からさらに新大阪まで伸ばす場合の建設費用は、2兆1000億円と試算されていています。このうちJRへの貸付料を除いた3分の2を国が、3分の1を地元自治体が負担します。時間短縮効果による観光やビジネスなど利用者の便益や、交通事業者の利益などの合計を、総費用で割った費用対効果の値は、1.0以上でメリットがコストを上回るとされます。しかし北陸新幹線の敦賀~新大阪間は、8年前の時点でも1.05と、ギリギリ採算がとれる値でした。青森大学の櫛引素夫教授(地域社会研究)は「金沢~敦賀間でも開業が1年延び、事業費が増えた。現在の資材費や人件費高騰を考えると、当時の見通しより、費用対効果の値は悪くなる可能性がある」と指摘します。
本州の移動軸が変わる?
大規模災害時の迂回路として必要との意見もありますが、東京~大阪間は従来の東海道新幹線、そして完成の見通しは不透明ですが2046年の開業を目指す北陸新幹線に加え、リニア中央新幹線の着工も始まっています。人口減少に直面する日本に必要なインフラ整備は、果たしてどのようなものなのでしょうか。
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