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参月の猟奇的な彼女を紹介します

インタビュー【大石参月(林田若葉)×森 哲郎(テクニカルディレクター)】

参月:こんにちは。

森:あまり話したことがないよね?

参月:そうなんです。私スタジオでの撮影が多かったから…。

森:スタジオだと僕はいつもスタジオの上にあるサブ(副調整室)にいたから。

参月:今日は宜しくお願いします。

森:お願いします。

参月:突然ですが、森さんは何をやっているんですか?

森:僕は何をやっているんでしょうね?TD(テクニカルディレクター)という仕事は、簡単にいうと…。スタジオ収録では、カメラを6台ほど使って同時に撮影するのですが、監督の考えた画(え)の組み立てを実際にVTRに落としていくという役目です。監督のイメージする画をカメラマンが撮って、それを多少修正しながらチョイスしていきます。この時はこのカメラ、この時はこのカメラ…という風に。分かります?

参月:なんとなく…。

森:例えば、“三朗と凛子が向かい合って喧嘩しているのを若葉と五月さんが見ているシーン”があるとしますよね。そうすると、三朗の顔を撮影するカメラが1台。凛子の顔を撮影するカメラが1台。若葉の顔を撮影するカメラが1台。五月の顔を撮影するカメラが1台。三朗と凛子の2人を撮影するカメラが1台。三朗と凛子と若葉と五月の4人撮影するカメラが1台。この6台のカメラで同時に撮影するんですけど、全てのカメラのテープを回すわけにはいかないので、僕がスイッチングして切り替えしてるんですよ。三朗がこのセリフを言っているときは三朗の顔を映しているカメラ、凛子がセリフを言っているときは凛子の顔を映しているカメラという風に。

参月:私、ドラマが初めてだったので、撮影したシーンをモニターでその場でチェックするときに、私がしゃべったときは私が映って、三朗さんがしゃべっているときは三朗さんの顔に切り替わっていて…という風に、すでにテレビドラマを見ているような映像にカメラが切り替わっているので驚いたんですよ。私、撮影したテープを後で見て編集するのかと思っていたんです!!

森:それをやっちゃうとテープがいくらあっても足りないし、機能的じゃないんです。撮影する前にドライ(カメラを使わずに行うリハーサルのこと)をやりますよね。そのドライの前に監督があらかじめこのセリフは誰をどう写すか考えて、その日の割本(台本から撮影するシーンだけを抜き出してコピーしたもの)に書いているんです。それを見ながらドライを行って、役者さんの動と合わせて、どう撮るかを決めていくんですけど…。そのときに6台のカメラで同時に撮影すると、どうしても無理がでてくるんですよ。三朗さんの全身を撮影しているカメラに、凛子の顔のアップを狙っているカメラが移りこんでくるとか…。だから、“このカメラはこの人がこのセリフを言っているときにしか映像を使いません”という風にある程度決めていれば、カメラマン同士で理解し合って、写らない位置に逃げることができるんです。他にも、凛子の顔を美しく撮るために、ここのときだけ照明を下げるとか、このセリフのときは三朗の顔のアップを撮っているから音声さんがマイクを三朗の近くまで持っていくとか、この部分では三朗と凛子の全身を撮影しているから、マイクを離さなきゃいけないとか…。それぞれのセクションがどんな画を撮っているか理解して、一気に6台で撮影が出来るわけです。そして僕が6台のモニターを見ながら切り替えていくわけです。

参月:どうやって切り替えているんですか?

森:ボタンが並んでいるんですよ。1、2、3、4、5、6と、それをこうやって…(と指を動かす仕草)。三朗しゃべったから1カメ、凛子喋ったから2カメ…という風に。

参月:いや〜。大変ですね。モニターを6台同時に見て目が疲れませんか?

森:疲れますね。だけど、ある程度“この部分は何カメで撮る”と決まっているので、割本と照らし合わせながら行うので、全部に集中しているような、なんというか…。

参月:その時に、割本に書かれた以外に、1カメよりも2カメの方がいいから2カメにしようとか、そういうこともあるんですか?

森:ありますね。カメラマンが決めていない画を撮ってくれるときがあって、その時はこっちの顔の表情がいいなと思ったら、監督に提案します。頭で考えていても、実際にお芝居をしたら違う場合も出てくるので、さらに面白くなればいいなぁと思いながらやっています。

参月:普段、生活していても人の顔を見て、“こっちから見るより、こっちからが可愛い”とか思ったりしますか?

森:それは…ありますね(笑)。

参月:(笑)

森:とはいえ、それは私生活で「この人は右が可愛い」とか思うってことじゃなくて、テレビを見ていて、“この人は右からのほうがすごく可愛いな”とは、“斜め下からの角度にインパクトがある”とか、そういうことを考えてしまうんです。

参月:もっと職業病みたいな感じで、気になるのかなと思っていました。

森:そんなことないですよ。私生活はごく普通です(笑)。

参月:話はかわりますけど、お子さんの幼稚園の運動会とかって…燃えますか?

森:あの…。私生活の撮影ってすごくヘタクソなんですよね。

参月:そうなんですか!?

森:妻に怒られるんですけど(苦笑)。要するに、私生活では撮りたいアングルに行けないんですよ。幼稚園の運動会って、場所取りも過酷なんですけど、その場所から動けないじゃないですか。本当はこの位置でこの角度から撮影したいのに行けない。結局、その1つのポジションで頑張らなきゃいけないということが嫌で、途中で録画ボタンを止めちゃうんですよね。「はい、おしまい」みたいな。なんか、ずっと長回しできないといんです。

参月:私ならダラダラと回しちゃいそうですけど…。そうですよね。前とか行けないですからね。

森:こんなこと言っておきながら、今年は『猟奇的な彼女』の撮影があったので、運動会に行けなかったんです。撮影以前の問題ですね…。

参月:来年は行けるといいですね…。

森:そうですね。

参月:話は変わりますが、『猟奇的な彼女』はラブストーリーじゃないですか。撮影するときに、自分の経験を生かして撮影したりするんですか?

森:仕事上の経験で、「こうしよう」っていうのはあるんですけど、自分の私生活の経験からは無いですね。特に三朗と凛子は異質で、どういう面白さがはまるのか悩んだんですよ。凛子ちゃんの内心はどう思っているのかを身近な人に聞いたりして…。いきなり破天荒で暴れる役柄なので、なかなか見えてこなくて…。身近な人というと僕の妻しかいないんですけども…(笑)

参月:(笑)

森:そういう女性の立場みたいなものは、どんな番組でも撮影前に聞いたりします。でも、撮影が進むにつれて草彅くんと麗奈ちゃんの間に空気みたいなものが生まれてきて、「こうすればいいのかな」「こうしたいのかな」と僕たちにも伝わってきたので、それを元に撮影を進められました。

参月:では最後に、一番印象的なシーンってどこですか?

森:印象に残っているシーンはすごくありますよ。風が強くてカメラが揺れて大変だったとか、雪が降ったとか、暑かったとか。でも、なかなか本心が見えない凛子の本音が見えてくるシーンがすごく印象に残っていますね。8話から最終回までの“凛子の三朗に対する想い”みたいな部分。後半は切なくなるシーンが多いので、最後まで注目して見ていただければと思います。

参月:はい。今日は森さん、ありがとうございました!!