会場:国立西洋美術館[東京・上野]/期間:2013年12月7日(土)〜2014年3月9日(日)



I. モネ《グランド・ジャット島》とセザンヌ《ポントワーズの橋と堰》

クロード・モネ 《グランド・ジャット島》 1878年 油彩、カンヴァス 56.3×74.5cm ポーラ美術館
ポール・セザンヌ 《ポントワーズの橋と堰》 1881年 油彩、カンヴァス 59.1×72.1cm 国立西洋美術館

セーヌ河に浮かぶ行楽地を描いたモネの《グランド・ジャット島》と、パリ北西の古都を描いたセザンヌの《ポントワーズの橋と堰》。
ともに、画面の端に木々を配し、遠方へとカーヴする道で奥行感を演出する伝統的な構図を利用しつつ、遠景に近代化を象徴する工場や鉄道橋などを配した水辺の眺めですが、2人の芸術の相違も際立ちます。
自然の息吹を伝えつつ、構築的で安定した空間が特徴的なセザンヌ作品に対して、モネは、明朗な色彩と素早い筆致、そして斜角を強調した空間構成によって、画中を一陣の川風が吹き抜けていくような動きのある風景を描き出しています。

△「並べて見たい!夢の共演!」一覧へ

II. モネ《ジヴェルニーの積みわら》と《積みわら》

クロード・モネ 《ジヴェルニーの積みわら》 1884年 油彩、カンヴァス 66.1×81.3cm ポーラ美術館
クロード・モネ 《積みわら》 1890〜1891年 木炭、紙 23.3×29.2cm 国立西洋美術館

モネは1890年代から、同一主題をさまざまな天候や時間によって描き分け、連作を発表し始めます。
《ジヴェルニーの積みわら》はその以前の1884年に制作された積みわらを主題とする作品の一つであり、《積みわら》は、1890年代の<積みわら>連作の中の一点にもとづいて描かれた素描です。
前者は陽光に照らされた積みわらを明るい色彩で描いています。一方、後者では積みわらを「包み込むもの」、すなわち光や大気など不可視なものを表現しようとしていることが、積みわらを囲む切れ切れの線からうかがわれます。

△「並べて見たい!夢の共演!」一覧へ

III. ピュヴィ・ド・シャヴァンヌ《貧しき漁夫》とピカソ《海辺の母子像》

ピエール・ピュヴィ・ド・シャヴァンヌ 《貧しき漁夫》 1887年〜1892年頃 油彩、カンヴァス 105.8×68.6cm 国立西洋美術館 松方コレクション
パブロ・ピカソ 《海辺の母子像》 1902年 油彩、カンヴァス 81.7×59.8cm ポーラ美術館 ©2013-Succession Pablo Picasso-SPDA (JAPAN)

印象派の画家たちが盛んに活動した1880年前後から1900年ごろにかけて、伝統的なスタイルをふまえつつ独自の象徴主義的な世界を描き、フランスで強い影響力を持っていたピュヴィ・ド・シャヴァンヌ。
この2点の作品からは、バルセロナで青春時代を送ったピカソもまた彼に惹かれていたことをうかがうことができます。水辺にたたずむ内省的な人物の表現、舟の形と水面への反映など、多くの共通点が見られます。

△「並べて見たい!夢の共演!」一覧へ

IV. モネ《バラ色のボート》と《舟遊び》

クロード・モネ 《バラ色のボート》 1890年 油彩、カンヴァス 135.3×176.5cm ポーラ美術館
クロード・モネ 《舟遊び》 1887年 油彩、カンヴァス 145.5×133.5cm 国立西洋美術館 松方コレクション

《バラ色のボート》 と 《舟遊び》 は、モネの2番目の妻アリスの娘、シュザンヌとブランシュがモデルとなっています。「人物を風景のように描きたい」 と語っていたモネは、両作品で周囲の風景と人物を一体として表現しています。
そして、日本の浮世絵の影響の下、中心を外した構図と大胆なモティーフの切り取りによって水面を画面に大きく取り込み、《舟遊び》 では、そこに映る人物の影や空や雲の反映をとらえ、《バラ色のボート》 では、水面の動きとともに奥に揺らめく水草までもを、うねるような力強い筆致で描いています。

△「並べて見たい!夢の共演!」一覧へ

V. クロード・モネ《国会議事堂、バラ色のシンフォニー》とクロード・モネ《ウォータルー橋、ロンドン》

クロード・モネ 《国会議事堂、バラ色のシンフォニー》 1900年 油彩、カンヴァス 82.0×92.6cm ポーラ美術館
クロード・モネ 《ウォータルー橋、ロンドン》 1902年 油彩、カンヴァス 65.7×100.5cm 国立西洋美術館 松方コレクション

モネは1899年から3年続けてロンドンを訪れ、この霧の都市を幻想的な 〈テムズ河風景〉 連作に残しました。モネはロンドンの魅力について、街を包む神秘的な霧のマントによってこそ生まれると語っています。
《国家議事堂、バラ色のハーモニー》 は、霧が太陽の光を浴びてバラ色に輝く中、青いシルエットで浮かぶ建物群が水面の反映像と一体化して抽象的ともいえる形へと変容し、人馬の通る橋を描いた 《ウォータルー橋、ロンドン》 では、橋の影と水面の反映像が一体になって並び、霧の奥へと続いてゆきます。


Facebook社、Twitter社のサイトに移動します。

↑このページの一番上へ