10月19日放送
音楽で世界を調和する ~左手のフルート奏者 畠中秀幸~

閉鎖された旧炭鉱の立坑に、美しい音色が響きます。
31年前から時がとまったかのような錆びた鉄や無人のトロッコ。それらと音楽が調和するような不思議な空間が出現しました。
演奏しているのはフルート奏者の畠中秀幸さん(56)です。

畠中さんの右半身はまひしています。14年前、突然の脳内出血で倒れた後遺症です。

「この体になったことの方がラッキーだ」
畠中さんはインタビューでこう語り、その理由を話します。
演奏行為や日々の生活で、身体の中で「まひがある右側」と「そうではない左側」が仲良くしないと物事がうまくいかない。すると対話が始まる。感覚が2倍になり、新しいものが生まれる。

異なるものを掛け合わせ、新たなものを創造する。そんな畠中さんのフルートの音色に感動し、全国から演奏や共演の依頼が舞い込んでいます。

戦後80年の今年、戦争の惨禍の場所となった沖縄と広島に慰霊演奏の旅をしました。そして建築家でもある畠中さんは、北海道の農村地帯に「遊び」を通して音楽と芸術を体感できるアートビレッジを作ろうとしています。

左右の感覚が異なる身体から響くフルートの音色は、傷ついた心や土地にどのような出会いをもたらし、どんな変化をもたらすのか。半年間に密着しました。

製作:HBC北海道放送
ディレクター:時崎愛悠