「ここが、私の家内が見つかったところだと思います」
「私のうち(家)に来ました。何もありません」
「こんな(状態)で、田んぼに復旧できるんだろうか」
津波で妻を亡くし、自宅も田も失った荒木清一さんの言葉は、深い悲しみと不安に包まれていた。
荒木さんは、福島県南相馬市の南部に位置する小高区角部内(つのべうち)に住んでいた。一面に広がる田んぼは、秋になると黄金色に染まった。しかし2011年、東日本大震災で集落は津波に襲われ、壊滅的な被害を受けた。さらに福島第一原発事故で自宅があった一帯は立ち入り禁止になった。
冒頭の言葉は、住民が一時帰宅する際、私たちが荒木さんに託したカメラに残されていた。荒れ果てた故郷を、復活させることはできるのだろうか。
荒木さんと周りの人たちの人柄に引きつけられて取材を始めて12年。待ち続けた時が訪れた。
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