クライマー・山野井泰史。世界にある登攀困難な巨壁に単独で挑んで、数々の画期的なクライミングを成し遂げてきた。劇的な生還を描いた沢木耕太郎のノンフィクション小説『凍』の主人公としても知られる。その山野井が人生最大の目標と定めた「ヒマラヤ最後の課題」と呼ばれる巨壁がある。世界第5位の高さ8463mの頂上に突き上げるマカルー西壁。8000m前後の超高所にオーバーハングした（垂直を超えた）岩壁帯があり、その恐ろしいほどの迫力は、挑戦するトップクライマーたちの勇気をも打ち砕く。

“究極の挑戦”の果てに見た栄光と挫折。そして生と死。四半世紀を経て蘇る巨壁との闘いと、クライミングに駆け抜けるその後の人生を山野井が語る。