報道の魂
ホウタマ日記
2015年10月22日 「特攻兵器“龍”の謎 〜そのとき首都攻略は迫っていた〜」放送後記 (松井智史)
はじまりは、人間機雷と呼ばれた特攻兵器“伏龍”の取材でした。終戦間際にアメリカ軍の上陸に備えて急ごしらえされた兵器。結果的には、使用される事は無かったものでしたが、もし8月15日に終戦を迎えていなかったらどうなっていただろうか…。この1つの疑問が、私達の間に生まれました。アメリカ軍の上陸作戦の資料や、伊豆半島に残された特攻隊基地の痕跡、海底で8月に発見された特攻兵器“海龍”の取材を行ったのも、そうした一念からでした。

今回、衝撃を受けたのは、“海龍”含めた兵器が現場からの提案で特攻兵器として運用されるようになったという事実。現場も含めてもはや“特攻”しかないというほどに日本軍は追い詰められていたのです。当時の隊員たちに話を聞くと、皆共通して“日本を守るたえにはしょうがないと思っていた”と話します。日本を守ろうという考え自体は尊いものですが、やはりそこまでしなければならかったのか…もっと違う方法があったのではないか…もっと早く戦争を終わらせる方法はあったのではないか…などと考えさせられます。

今回、私達は海上自衛隊による“海龍”の調査に同行しました。調査船には、たまたま日本の海軍史に詳しい専門家の勝目純也氏も乗り合わせていました。今回、番組内では勝目氏のインタビューを紹介することはできませんでしたが、過去の戦争から私達は何を学べるかということについて、こんなことを述べていらっしゃいました。

「今の価値観とか、われわれが置かれている立場で、過去を評価する、判断することは簡単です。しかし、それは若干違和感がある。当時われわれがその時代に生まれていたら、果たして正しい判断ができただろうかと考えると一概にはそうは言えない。そこをよく考えた上でいわなければならないことで、非常に難しい問題です」

戦争がいかにおろかなモノか。何の罪もない住民はもちろんのこと、軍人だって死んでいいことはない。今回、取材に応じてくれた元“伏龍”隊員、岩井さん(95)の言葉は、私達に1つの答えを示唆してくれているように思います。

「当時、日本に本当は大義はないということまで知っていた。にもかかわず、なんらその批判にもとづいた行動はなにひとつとっていないんだ。口をつぐんだんだよ。みんな。ぼくもふくめて、それをくりかえしてもらいたくない」

二度と同じ過ちを繰り返さないためにも、私達はあの戦争で何があったのか、伝えていかなくてはならないと考えています。


松井智史
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